自分好みのシャフトを入れたい、というゴルファーが増えているが、こうしたユーザーにとって一番の問題は、パーツ売り中心の一部メーカーをのぞいて、ほとんどのクラブメーカーがヘッドの単体売りをしていないこと。つまり最初からついているシャフトごとクラブを手に入れた上で、別に好みのシャフトを購入しなければならなかった。そのあたりに目を付けたクラブメーカーが、最近こぞって取り組みはじめたのがカスタムオーダーというシステムだ。
カスタムオーダーは、メーカー標準品に加えて、アフターマーケットで人気のシャフトやグリップを特注品として揃え、ユーザーからのオーダーに応じて組み上げるというもの。ウッド用ならフジクラのスピーダーやグラファイトデザイン社のツアーAD やブルーG、アイアンではNSプロあたりの人気シャフトは、ほぼすべてのメーカーのカタログに掲載されているといっていい。
例えば、SRIスポーツのドライバー「スリクソンW-404」では9種類のシャフトが選べるようになっているが、アフターマーケットで売れ筋といわれるシャフトがほとんど網羅されている。さらにミズノのドライバー「MP-001」にいたっては、ウェブ上のオーダーフォームを使って、誰でもシャフト80種類、ロフト4タイプ、グリップ8種類、スウィングウェイト7パターンから選ぶことができる。その組合せは何と1万7920通りにもなり、ほとんど世界に1本といっていいマイクラブがオーダーできる。
気になるのは値段だが、ミズノのクラブオーダーシステムでシュミレートしてみた。「MP-001」(8万4000円)に人気の「ツアーADI-65」(4万6200円)を普通に足せばそれだけで13万200円、実際はこれに工賃やグリップ代もプラスされる。これをミズノのクラブオーダーシステムで注文すれば10万3950円とその差は実に2万6250円。1本5万円から10万円近いドライバーを購入し、さらにシャフトに数万円を投資してもそれに見合う結果が得られるかどうか、二の足を踏んでいたユーザーもこれなら手を出しやすい。
このようにユーザーにとっては、メリットが大きいカスタムオーダーだが、クラブメーカーにとっては、パーツの在庫を持たなければならなかったり、量産ライン外で人員を動かしたり、それなりのリスクも発生する。にもかかわらず各メーカーが新たにカスタムオーダーに取り組む理由はどこにあるのか。
「自社のオリジナルシャフトに自信はありますが、商品力をより高めるためにもお客様の望むものは揃えておかなければならない」(SRIスポーツ広報部・小山明子さん)
「プロサービスでできることが一般のお客様にできないはずはないと、いろいろなご注文をお受けしているうちにヘッドの刻印や削りまで対応するようになった」(ミズノ広報部・西田氏)と各社とも他社とのサービスの差別化を一番にあげている。
また、シャフトメーカーのフジクラは、クラブメーカーがカスタムオーダーに力を入れることについて、
「これまでクラブ選びの基準はヘッドだけだったが、シャフトが選択の基準になってきたのは嬉しいこと。これによってシャフトに興味がなかった層へのアピールできる」(高梨部長)と歓迎するが、一方で
「ただツアーで使用率が高いとかいった理由で選ぶのはおすすめできません。やはりフィッティングの専門家に見てもらうことをおすすめします」
もっとも割を食いそうなのが、これまでリシャフトを中心に行ってきたゴルフ工房だが、意外な反応が返ってきた。
「フィッティングに対してゴルファーの関心が高まるので、全体的にはよい傾向だと思います。ただ、本来、その人に合ったクラブを見つけるには最初にシャフトを決めてからヘッドを選んだほうが簡単なんです。そのほかにもフィッティングやクラブの組み立てに関してはわれわれなりのノウハウがあるので、そこにわわれわれの生きる道があります」(ゴルフレンド日本橋・大野和昭オーナー)などむしろ業界の活性化に期待する意見が多い。
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