最初の提訴から足かけ5年、10月13日、浜野ゴルフクラブのコース施設に設定されていた、極度額200億円の根抵当権の抹消を命じる判決を東京高裁が下した。この巨額の根抵当権が消えれば、ゴールドマン・サックスグループ(以下、GS)は最大債権者としての権利を失い、浜野GCを経営する(株)国際友情倶楽部の債権者はほぼ会員のみとなり、スポンサーなしの自主再建が可能になるのだが……。
まずはこれまでの流れをざっとおさらいしておこう。日東興業の債務のために、あさひ銀行が浜野GCの施設に極度額200億円もの根抵当権を設定したのは今から9年前。親会社日東興業が和議手続きに入ったことで、国際友情倶楽部はあさひ銀行からコースを競売されないために、あさひ銀行に総額59億円もの債務を日東興業に代わって13年かけて返済する弁済協定も締結することに。
これに猛反発した会員組織が5年前、「会員債権者に対する詐害行為だ」として、弁済協定の取り消しと、根抵当権の抹消を求める訴訟を起こした。その後日東グループをGSが買収、浜野GCに設定された担保もあさひ銀行からGSのグループ会社が取得、国際友情倶楽部も民事再生手続の開始を申立てると、会員組織が会社更生法で対抗。結局更生法で手続きが進められることになったため、GSは国際友情倶楽部の資産に担保を持つ、更生担保権者という位置づけになる。
会員が起こした訴訟は更生管財人が引き継ぎ、昨年9月に東京地裁が下した判決は、弁済協定の無効は認めたものの、詐害行為については「その額は6億円なので、それに相当する部分の土地だけ担保の抹消は可」というもの。つまり、事実上担保は残ったままという結論だった。そこで管財人側が控訴していたわけだが、高裁はゴルフ場施設の一体性を認め、全体の担保抹消を認めてくれたわけだ。
便宜上各コースが別法人になってはいても、経営は親会社と一体で、親会社の担保がコースにべったりついていて、コース経営会社の債務は預託金だけなのに、倒産するとその担保がネックになってスポンサー抜きの自主再建が困難というケースは少なくない。
詐害行為が認められて、担保が消せるのなら会員にとっては朗報だ。今回の判決、他のコースでも応用出来ないのだろうか。
「判決を見ると、今回は広く債権者平等原則を貫かなければならない更生手続き中であること、そして国際友情倶楽部には預託金債務以外に債務がほとんどなかったのに、親会社といえども一方的に他の会社に資産を提供してしまい、そのせいで債務超過になってしまうなど、国際友情倶楽部にとっての利益がまったくないこと、会員は単なる金銭債権者ではなく、施設が処分されてしまったら利用権を奪われるという特殊な債権者であること、そして日東グループの他のコースとの共通会員権ではなく親会社日東興業から受ける利益が会員には一切ないことなど、あらゆる条件が重なっている。」(倒産法に詳しい弁護士)といい、どこのコースにも応用出来るわけではなさそう。
だが逆に言えば条件がそろえば担保を抹消出来る可能性もあることをこの判決は示したと言える。GSでは上告期限前日の10月26日、最高裁に上告しており、この判決がこのまま確定するのかどうか、結論はまだもう少し先になりそうだ。
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