先週、日本国中が見守るなかプロ野球界への新規参入をこばまれたライブドア。今年6月に近鉄球団買収に乗り出して以降、常に動向が注目されてきた同社だが、実はその騒ぎの裏でゴルフ界への参入を着々と進めていた。ITベンチャー界の“雄”とも“風雲児”とも言われる堀江貴文社長(32)が、なぜ今、ゴルフのオンラインビジネスに乗り出し、ひと暴れしようというのか。その狙いと背景を探った。
ライブドアが11月21日に新たに立ち上げるゴルフサイトの名は「WOO-GO(ウーゴ)」。当面、ゴルフ場予約をメインサービスに据え、市場規模が拡大しているネット通販は将来的にも大きな柱にする予定はないという。
それにしても、同様の予約サイトは登録メンバー50万人規模と20万人規模の大手2社を筆頭に比較的名が知られた数社によって市場は固まりつつある。今さら参入しても、と思われるのだが……。よもや、その大手のうちの1社がプロ野球参入競争で敗れた「楽天」の子会社だから?
ところが、グループ子会社のライブドアファイナンス(旧・日本グローバル証券)の調査により、「オンライン予約を利用しているゴルフ場は全体の約55パーセント、利用しているゴルファー総数は約270万人」程度にとどまっている実情が判明したという。後者については、昨年の国内のゴルファー総数は約9000万人だから、わずか3パーセントに過ぎないのだ。
その一方で全国のゴルフ場を市場調査すると、あるゴルフ場では予約サイト経由が月間1600人、入場者の約70パーセントにも達したコースがあったそうだ。つまり、集客はほとんど予約サイト任せというゴルフ場もあるのだ。
これは極端な例にしても、運用次第ではまだまだ利用者を増やせるメディアであり、集客ツールになるというのが、同社の分析だ。
こうしたことから堀江社長はプロ野球参入問題で多忙な今年8月、ゴルフ界への新規事業に正式にゴーサインを下した。それからわずか3カ月で営業開始という、IT業界のスピードには驚かされるのだが-------- それはともかくその後、加盟ゴルフ場を募るべく全国の約1000コースに勧誘を始めたところ、従来の予約サイトにない特色あるコンセプトを打ち出せば、利用者を獲得できる商機を見出すことができるという。そのコンセプトとは、「単なるゴルフ場への送客サイトではなく、グッドゴルファーが集まるコミュニティにしたい」(ディレクター・末冨典男氏)ということ。
そのために利用者のメンバー登録の段階では規制は設けず、誰でも入会できるが、実際の予約に際しては、例えばマナー遵守の誓約といったハードルを設け、プレー後にゴルフ場からクレームが来た場合には、最終的には退会までも審査して決定することを計画。グッドゴルファーが集う予約サイトに特化させたいという。
「また、これまで予約サイトに加盟していない、いわゆる名門コースの登録にも力を入れています。実際、スタート時にはうちでしか予約できない有名コースがいくつか加盟する予定です」(シニアマネジャー・狩野健二氏)
現在のところ、登録コースは約100、登録メンバーは約1万人(仮登録開始後20日足らず)だが、21日の運営開始時には300コース、10万人程度の規模になる予定だ。
さらに、将来的には加盟ゴルフ場に対するマーケティング支援や運営コンサルティングといった、もともと得意な分野への進出も企画している。そのためだろう、スタッフにはファイナンス会社からの転籍組が多い。従来の予約サイトとは違って重心をよりゴルフ場側に置いた運営になるのかも知れない。
さて、プロ野球参入では敗れたが、この間、堀江社長の知名度と好感度は確実にアップ。転んでもタダでは起きないしぶとさを見せた。まずは、お手並み拝見といったところだ。
|