ゴルフ場のクラブハウス内で営業する、いわゆる「プロショップ」の業態がこのところ変化している。従来にない量販店並みの価格設定、ポイントサービスカードの導入、試打クラブの豊富な品揃えなど、街のショップに負けない積極的な販売策をとるゴルフ場が増加しているのだ。急速に変化しつつある実状を調べてみた。
かつてのプロショップといえば、ほとんどが定価販売で、購入するのはボールやシューズを忘れたといった『よっぽどのとき』か、一部の接待客に限られていた。
ところが、昨年あたりから、街の量販店に負けない価格で用具、用品を揃えるなど、積極的な販売に努めるゴルフ場が現れ始めた。その代表が現在、全国で74コースを運営するアコーディア・ゴルフのゴルフ場だ。昨年、同グループが本格営業する際にCEOの竹生道巨氏は、「お客様には、プレーしなくても買い物に来ていただけるようなプロショップにしたい」と抱負を語った。あれから1年余、実際はどう変化したのだろうか。
「売上額の前年度比で325パーセント増加したコースもあります」(広報担当・山下眞市氏)というからこの一年ですっかり固定客を捕まえたゴルフ場もあるようだ。実状を知らない人がたまたま店内をのぞいて買ったというのでは、これほどの急激な伸びにはならないからだ。
山下氏によれば、あるプロショップの全売上高に占める主なアイテム別売上比をみると、クラブ30パーセント、ボール20パーセント、ウェア15パーセントになっているという。そして、「この割合は一般的な量販店の割合に近いと思われます」と語る。来場した人がたまたま気に入って買ったというのではなく、量販店と同様、最初から購入目的でプロショップに来店する人の割合が多くなった証拠とみているのだ。
この背景には、割引率が増えるポイントカードの導入やクラブのメンバーに対するサービスの拡充といったリピート客確保策の効果もある。そして、今や「街のショップのライバル」になりつつあるのかも知れない。
その傾向は、実はメーカー側も認めている。
「ボールやウェア、小物などはよく売れているようです。それと、キャディバッグなども街で買うよりは、帰りが楽だからと買っていく人が増えたそうです。クラブも、大手メーカーのものでも割引で売られていますね。うちも、今後成長する販売チャネルと考え、営業で直接訪問したり、FAX等で商品情報を流すようになりました」(クリーブランドゴルフ営業担当・小松博和氏)
また、ブリヂストンのチャネル企画部ゴルフ場企画によれば、「確かに変わってきました」と前置きした上で、例えばボールの場合、1カ月の売上げが、従来月20~30万円程度だったのが80~100万円に拡大したゴルフ場もあるという。
そのうえで、「価格だけではなく、最新の品揃えや商品情報の提供といった点でもお客さんに喜んでもらおうと努力、勉強するゴルフ場が増えました。そうしたプロショップには、こちらも積極的に応えていきたいと思っています」と語る。
ただし、各メーカーの担当者が共通して指摘するネックがある。それは「専門知識の不足」。例えば、売値の大きなクラブでは、試打だけでは十分といえず、やはり専門家のアドバイスや診断がより効果的。その点は、経営の効率化を追求する今のゴルフ場には難しいのかも知れない。
このウィークポイントはゴルフ場側も十分認識しており、「量販店にはできない、実際のコースですぐに試せるという、ゴルフ場ならではの個性、強みを活かしていきたい」(前出・山下氏)として、専門家との会話や情報交換を楽しみにショップに通うゴルファーは、やはりそちらで…、と差別化する。
しかし、今後はメーカーのタイアップをより進めた、斬新な企画が登場しそうだ。ゴルフ場に行った際には、これまで素通りしていたプロショップをのぞいてみては?
|