特別清算中の湘南観光開発(株)で、系列4コース(レイクウッドGC、平塚富士見CC、サンパーク明野C、レイクウッドGC富岡C)の名義書換が再開する。法的手続き中の名変再開は極めて稀なケースだが、背景には来年度、廃止が噂される損益通算の問題が絡んでいるようだ。
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ゴルファーに人気の高い レイクウッドGC |
湘南観光開発(株)が東京地裁に特別清算を申請したのは、8月23日のこと。8月27日には開始決定が下された。ところが名変の停止を同社が発表したのは9月3日のこと。開始決定が予定よりも早まり、またKGK(関東会員権取引業協同組合)でも、申請直前に本店所在地が神奈川県二宮町から東京都港区に移転していたことで確認に時間がかかかった。そのため同組合が、会員に取引停止を伝えたのも9月3日になってしまった。
申請からこの間が10日間。レイクウッドGCは、バブル期は小金井CCを上回ったこともある会員権相場のプライスリーダー。それだけ社会的な影響力も強いこともあり、組合は大塚重昭理事長名で、この間に取引された会員権、及び名変申請中の約60件の会員権の保全を求める、異例の申し入れを行っていた。
特別清算にせよ民事再生にせよ、開始決定が下った時点で名変がなされていない以上、購入者は会員として認められない。すでに会社側は日本土地建物(株)など「日本を代表する有力企業をスポンサーとした新会社に営業譲渡し、新会社は会員の権利を引き継ぐ」(申請代理人の小竹治弁護士)とした再建案を用意していたこともあり、組合の申し入れを受ける形で、この間に売買、名変申請中の会員権を認める方向で裁判所との協議を進めてきた。
ところが今回、11月11日から12月30日までと期間限定ながら名変再開に踏み切った背景には、会員の中に年内に市場で売却したいという多くの要望があったためだからだという。そこには損益通算の問題も絡んでいる。
損益通算とは、会員権を売却したとき購入時よりも損失が出た場合、その損失を他の所得と相殺できる制度。これにより国税である所得税、そこから換算される翌年度の地方税が節税できるというものだ。
ところが財務省は、来年の税法改正でゴルフ会員権の損益通算の廃止方針を打ち出しており、来年3月の通常国会で通過させたい意向。通常、この種の法律が可決されれば、1月1日に遡って適用されるため、年内に売却しなければこの特典が受けらないことになる。レイクウッドGCのみならず、平塚富士見CCもバブル期は億カンに数えられたコース。それだけに損失を抱えている会員も多く、そうした要望が根強くあったものらしい。
再開される名変手続きは、所定の念書の差し入れが求められ、その後、弁護士3名による「資格審査委員会」で入会審査される。これをパスすれば晴れて会員になり、来年に予定されている債権者集会にも出席できることになる。「会員の要望に耳を傾けての対応です。今後の日程には影響はない」(小竹弁護士)
過去に申し入れをしたKGKも、「法的手続きにあるゴルフ場で名変が再開されることは極めて稀なケースだが、市場の混乱を回避する意味でも、会員の権利や売買した会員権業者の信頼を損ねない意味でも賢明な対応だと評価している」(同事務局)と、好意的な受け止め方をしている。
実際に名変が再開した場合の市場への影響はどうか? 損益通算狙いの会員権が市場に流出し、価格を暴落させる心配もないわけではない。だが、都内の老舗会員権業者は、「確かに一時的に売り注文は増えるが、レイクウッドも平塚富士見も素材がよく人気も高い。特別清算中に名変が開始されるということは、新会社との話し合いもついているという証明でもある。案外、値上がりする可能性もあるのではないか?」
ちなみに特別清算申請時のレイクウッドGCは3200~3500万円前後、平塚富士見CCは1300~1500万円前後で推移していた。暴騰ということはないであろうが、倒産(特別清算)手続き中に値上がりをする会員権となるとしたら、ビッグニュースになることは間違いない。
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