週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。
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　この疑惑を紹介したのはゴルフ専門テレビの「ゴルフチャンネル」のホームページ。それによればドライバー平均飛距離の昨季と今季のデータ比較から、「今季の上位7人はいずれも昨季より飛距離を落としている」「昨季ベスト10のうち、今季もベスト10に残ったのはハンク・キーニー、ジョン・デーリー、マイク・ハイネンの3人だけ」「昨季20位までの選手で、今季平均飛距離を伸ばしたのはタイガー・ウッズ、デービス・ラブIII、マイク・ハイネン、ハリソン・フレイジャーの4人だけ」といった事実----つまり、昨季の飛ばし屋が軒並み飛距離を落としているということ----に着目。このことから、昨季まで違反ドライバーを使っていた選手が多数、今季は規制値内に持ち替え、結果、飛距離を落としたと推論できるというのだ。

昨年も今年も平均飛距離第１位はハンク・キーニー

　しかし、同規制は99年から実施されている。どうして今季になって急に持ち替える選手が増えたというのだろうか。

　実は「規制」といっても、昨季までは実際に使用クラブをテストすることはなく、単に全米ゴルフ協会（USGA）が公表する違反クラブリストにあるドライバーでなければ使用できた。そのため、いわば「ザル法」で昨年夏にはタイガーが「違反クラブを使っているプレーヤーがいる」と発言し、波紋を呼んだことがある。

　そこで、米ツアーでは今季から試合会場に反発係数の簡易測定器を持ち込み、選手の任意で、あるいは競技委員がテストの必要性を感じたときには、その場で計測できる体制を整えたのだ。

　怪しいクラブを手にしている選手にとっては、測定が強制されるわけでなくてもいい気持ちはしない。それで今季、ドライバーを持ち替えた選手が現れた可能性があるというのである。

　路肩に警察官の姿を見つけると、速度測定でないと分かっても、つい速度を緩める運転心理に似たところがあるだろう。

　ところで、この疑問に対しUSGAのシニア・テクニカル・ディレクターは「飛ばし屋の中にはスコアを考えてフルスウィングを控えた選手がいた結果と考えられる」とコメントし、その好例にフィル・ミケルソンを挙げている。ちなみに、ミケルソンの平均飛距離は03年の306.0ヤード（3位）から今季は295.4ヤード（30位）と激減している。

　また、同ディレクターは「飛ばし屋の中には、シード権を守れない選手も少なくなく、毎年上位陣の顔ぶれは大きく変わるもの」として、疑惑を否定している。

　しかし、米ツアーのクラブ事情に詳しい松本秀樹氏（ゴルフショップ・ミニボックス社長）によれば、「アメリカのツアー関係者やメーカー関係者の間では、公然と疑惑が囁かれていたクラブがありました。使用する選手も何種類ものドライバーをテストしてますから、怪しいことは分かっていたと思います。それでも試合で使えば少なくても1500～2000ドルのボーナスが貰えますし、万が一、違反が指摘されてもメーカーからの支給なので、責任は問われないだろうと思って使っていたんでしょう」と実状を語る。

　ところが、そのドライバーが今年になって新製品に代替わりしたため、今季平均飛距離を落とす選手が多かったいう疑惑については、多分当たっているでしょうと言う。

　松本氏はさらに興味深い話を明かしてくれた。ツアーでの計測器の導入により、「いつテストされても大丈夫なように、プロ仕様は市販品より少しシャローフェースにして、反発係数を安全な数値にまで抑えているクラブもあります。素人目にはまったく分かりませんけれど……」

　計測データが存在しない以上、真相は藪の中だが、「飛ぶクラブが欲しい」のはプロもアマも事情は同じ。さて、来期の飛距離スタッツがどうなるか、今から興味が湧くところだ。