ドライバーに続いてアイアンにもコンポジットの波がやってきそうな気配だ。といいながらも実はアイアンにおけるコンポジットヘッドの歴史は案外古い。
1992年に発売されたブリヂストン「タンベックTB1」は比重の大きいベリリウムカッパーのボディに高反発の鍛造チタンフェースをインサートした革新的なアイアンで、高価格にもかかわらず店頭で品切れ状態が続くほど売れた。
これ以降、軽量かつ高反発なチタンフェースをステンレスボディにインサートしたコンポジットアイアンは、多くのメーカーがプレミアムアイアンとしてラインアップするようになり、現在に至っている。
次に登場したのは、ソール部分に重いタングステンのウェートを埋め込む手法で、これもプレミアムアイアンでは一般的になった。
そして、最近ブームとなりつつあるのは、金属以外の素材、シリコンゴムや樹脂、カーボンを用いた異素材コンポジットアイアンだ。中空ボディの内部にシリコン系のゴムをインサートしたブリヂストン「ViQアイアン」やセイコーエスヤード「C-III」、キャスコ「パワートルネード・インスパイアアイアン」、中空のカーボンをサンドイッチしたヨネックス「サイバースター・パワーブリッドPB」、バックフェースにサーモセットポリウレタン樹脂を装着したキャロウェイ「ERC」など各クラブメーカーから工夫を凝らした製品が続々と登場している。
様々な素材や形状で競い合う異素材コンポジットアイアンだが、実際、それぞれ設計のねらいはどこにあるのだろうか。
2003年にプロギア「デュオ」が登場して以来、高弾道・低スピンが特長のカーボンコンポジットドライバーが一つのカテゴリーに育ち、また、ターボラバー効果を謳うブリヂストン「ViQドライバー」が大ヒット商品となったが、同じ異素材といってもアイアンの場合は使われ方が微妙に異なるようだ。
「ドライバーの場合、ターボラバーは飛ばしに直結していますが、アイアンは芯を外したときの嫌な感触をやわらげる効果をねらっています」と違いを説明してくれたのはブリヂストンスポーツ広報の星三和子さん。
また、キャロウェイゴルフPRマネージャーの松尾俊介氏からも、「最新のアイアン設計は、より多くのフリーウェートを作って、いかに配分するかにかかっています。そのためには硬い素材でフェースを薄く作りたいのですが、そうすると打感が硬くなってしまうのが欠点。それを緩和するのが樹脂素材の役割です」と似た答えが返ってきた。やはり、最新の異素材コンポジットアイアンのねらいは同じところにあるようだ。
つまり、コンポジットドライバーのイメージなどから誤解している人も多いようだが、覚えておきたいのは、アイアンの場合、異素材そのものが飛距離をアップさせるわけではないということ。
「アイアンの飛距離はロフトとヘッドスピードで決まるものです。フェースを薄くすれば余剰重量を周辺に配分できるので、より低重心でボールが上がりやすいアイアンを作れます。そうすればロフトを立てて飛距離を出せるというわけです。ただ、その代わりに打感が悪くなってしまうので、それを補うためにゴムや樹脂などの素材を使っているのが最近の異素材コンポジットアイアンです」(クラブ設計家/竹林隆光氏)
したがって異素材コンポジットアイアンを選ぶ際には、異素材だから飛ぶに違いない、という単純な思いこみは捨てた方がいいだろう。
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