債権者集会を経て可決され、東京地裁が認可決定を出した再生計画案に東京高裁がノーを突きつけていた問題で、最高裁は東京高裁の判断を支持する決定を下した。
この問題は、昨年7月に民事再生手続の開始を申立てていた、鹿島の杜CC(茨城)の経営会社である(株)鹿島の杜カントリー倶楽部(以下、鹿島の杜)の再生計画案を巡るもの。
会社側から提示された計画案は、一般債権者、退会会員と1000万円以上の大口債権者は返済率0.2パーセント、継続会員は返済率60パーセントで10年据え置き後抽選償還というもので、今年2月、債権者集会で可決された。ただ、大口債権者であるRCC(整理回収機構)がこの計画に反対、集会後に意見書を提出したため、東京地裁は集会後即日ではなく、1週間後に再生計画案の認可決定を下した。
しかし、そこへ待ったをかけたのが、鹿島の杜に対して再生債権総額の17パーセントにあたる86億円の債権を持つ(株)鶴亀など2社。再生法、更生法、破産法には地裁が下した決定に不服がある場合、利害関係者がより上級の高裁に不服申立が出来る、「即時抗告」という手続きを使った。
その結果、東京高裁が今年8月に出した答えは、地裁の決定を覆す、再生計画案の不認可決定だった。一般債権者および退会会員に比べ、継続会員の返済率が高すぎることが不平等であること、抽選償還を受けられるのは年間2~3人程度で、継続会員の間でも早く償還を受けられる会員とそうでない会員で不平等であること、継続会員に分割できる会員権と、分割できない会員権があるのは不平等であること、預託金債権のみを債権と認め、プレー権についての金銭評価をしていないことが不平等であることなど、債権者平等の原則に反する、というのが主な理由だ。
しかも、「一部の法律実務家が(中略)債権者平等を無視し、より多数の継続会員債権者を優遇し、債権者集会における多数の賛成を得るための誘導工作が不当に行われている疑いが強く、監督委員や再生裁判所が、(中略)債権者平等の原則ないし債権者間の実質的均衡を十分にチェックしていない」
として、再生法担当部署である東京地裁民事20部と、監督委員にとっては実にきついコメントもついていた。
この決定に対し、会社側は最高裁に判断を仰いでいたが、最高裁は東京高裁の決定を全面的に支持する決定を下したわけだ。
ゴルフ場再建の実務にあたっている弁護士などからは、「プレー権の金銭評価はナンセンス」「計画立案上抽選償還をはずすことは不可能」「これでは再生法による再建案は作成出来なくなってしまう」 など、この決定に対する不満の声が上がっている。
ただ、その一方で、「もともと一般債権者や退会会員と、継続会員で返済率に差をつけることはおかしい。抽選償還に関しては、ゴルフ場からあがる利益が年間でせいぜい5000万円程度であるという現状からすれば、1年間に返済出来る人数が限られるのは当然だが、年間2~3人というのはやはり少なすぎるかもしれない。本件ではやはり、返済率にあまりにも差がありすぎることが問題視されたのではないか。継続会員の返済率を一般債権者なみに引き下げれば、例えば年間10人とか、もう少し抽選償還に当たる人数も増やせる。だから、この決定で再生法では再建案が立案出来ない、というのは悲観しすぎ」 とする冷静な意見も、倒産法の専門家からは聞かれる。
会社側では既に最高裁への抗告と同時に再生計画案を作り直すため、2度目の民事再生手続きの開始を東京地裁に申立て、今年10月8日、東京地裁から手続きの開始決定を受けている。そして翌月の11月19日には、最高裁決定に従って、分割なし、抽選なしで、一般債権者とも弁済率を統一した再生計画案を提出している。
しかし、一部の会員から2度目の再生法申請翌日に、会社更生手続の開始を申立てられている。
今のところ東京地裁は2度目の再生手続きを先行して進めさせる方針で、来年2月23日に開催される予定の再生法の債権者集会の結果、改訂版の再生計画案が可決されれば更生手続きを棄却し、否決されれば更生手続きに移行することになる。
ただ、改訂版の再生計画案にも即時抗告することは可能で、事態の決着にはまだ当分時間がかかりそうだ。
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