平成9年の日東興業倒産から早8年。ゴルフ場経営大手専業各社が次々と法的手続きに移行する中、最後の砦とも言える、富士カントリーグループが遂に法的手続きへの移行を開始した。
まずは平成16年12月6日、富士カントリー塩河倶楽部(岐阜)を経営する株式会社富士カントリー塩河ゴルフ場と、富士カントリー富岡倶楽部(群馬)を経営する㈱富士カントリートミオカクラブ(以下、富岡)の2社が特別清算、富士カントリー大多喜城倶楽部(千葉県)を経営する株式会社富士カントリー大多喜城ゴルフ倶楽部が民事再生手続きの開始を申し立てた。
次いで12月15日付、小萱チェリークリークCC(岐阜)、富士カントリー出島倶楽部(茨城)、富士カントリー市原倶楽部(千葉)の3コースを経営する富士カントリー株式会社が特別清算、そして翌12月16日には富士カントリー榊原温泉ゴルフ倶楽部(三重)を経営する富士グリーン株式会社が民事再生手続の開始を申立てた。
今から約40年前、フジパンの創業家とスーパーのユニーの共同出資で誕生した富士カントリーグループは、現在ではグループ企業13社で国内25コースを経営、規模ではローンスター、ゴールドマン・サックス、西武グループ、東急グループに次ぐ大手である。
本稿締め切り時点で法的手続きに踏み切った5社・7コースのスポンサーは、既に決定済みで、塩河は東建コーポレーション、富岡はユニマットホールディングのグループ会社、大多喜城は東急不動産のグループ会社、そして小萱、出島、市原の3コースはオリックスのグループ会社への営業譲渡が完了している。いずれも譲渡先が会員のプレー権を保証し、預託金はじめ負債のカットは特別清算や民事再生の手続きの中で実施する。
法的手続きをとってからスポンサー探しをするのではなく、スポンサーへの営業譲渡をすませた上で法的手続きに入ったことについて、大多喜城と塩河の代理人を務める船橋茂紀弁護士は、「法的手続きの中でスポンサー探しをすると、プレー権の保護は常識であるとしても、ともすると買い値の高さが最優先される。しかし高く買われれば会員の追加募集などの形で必ずそのツケは継続会員に回される。そこで、『適正』な価格で、雇用維持やゴルフ場経営への理解が深く、出来れば既に経営実績があるところへの営業譲渡によって、会員のプレー環境が最大限確保される方法として、この形を選んだ」としている。
富士カントリーグループのコースは、昭和60年頃までに完成したコースは株主会員制であるため、預託金問題を抱えていたのは昭和60年から平成6年ころまでにオープンしたコースだった。今回申立に踏み切ったのもいずれもこの期間にオープンしたコースだ。
このため、富士カントリー可児クラブ可児ゴルフ場(岐阜)、同美濃ゴルフ場(岐阜)の2コースを経営する株式会社富士カントリークラブ、房総カントリークラブ房総ゴルフ場(千葉)、同大上ゴルフ場(千葉)の2コースを経営する株式会社房総カントリークラブ、富士カントリー明智ゴルフ倶楽部明智ゴルフ場(岐阜)、同賑済寺ゴルフ場(岐阜)、同かしおゴルフ場(岐阜)、同ひるかわゴルフ場(岐阜)、同荘川ゴルフ場(岐阜)の5コースを経営する株式会社富士カントリー明智ゴルフ倶楽部、そして富士カントリー笠間倶楽部(茨城)を経営する株式会社笠間ゴルフクラブの4社については「株主会員制で預託金問題を抱えていないため、法的手続きへの移行の予定はなく従来通り営業を継続する」(4社の会社側代理人・船橋弁護士)という。
残る株式会社富士カントリー小野クラブ(富士エクセレント小野クラブ経営)、株式会社富士エクセレント倶楽部(富士エクセレント御嵩花トピアゴルフ場、同一志温泉ゴルフ場、同伊勢大鷲ゴルフ場、同伊勢二見ゴルフ場、稲武カントリークラブの5コース経営)、広島西カントリークラブ経営の株式会社広島西カントリー倶楽部、富士カントリー芝山ゴルフ倶楽部経営の株式会社芝山ゴルフ倶楽部の4社についてはいずれも平成9年以降の開場であったり、ここ3年以内に買収したコース。従って現時点での緊急性は低いが、法的手続きへの移行の有無が注目される。
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