今年のシャフト市場で人気が出そうなのは、まずツアーモデルが中心になるだろう。プロの使用率が高いモデルに人気が集まるのは完成品のクラブでも同じだが、趣味性の高い交換用シャフトとなればその傾向はより顕著だ。加えて今年は一般ゴルファーが打ちやすい軽量バージョンが発売されることから、人気が集まりそうな気配だ。
例えばグラファイトデザイン社は、ツアーから一般ゴルファーへのトップダウン型の販促プロモーションが得意なメーカーだ。製品開発はプロたちの意見をフィードバックしながら行われるが、それは同時にプロモーションとしての意味合いを持つ。選手の間ではアマチュア以上に口コミ効果が大きく、評判の良いシャフトはあっという間に使用者を増やす。そこでシャフトメーカーは、新しく開発したシャフトをいきなり市販せず、ある程度プロに浸透した頃合いを見計らって店頭に送り出す販売戦略を行うことがある。製品としての評価が定まった段階で市販することでメリットを増やし、リスクを減らすのだ。ショップにとっても「非常に売りやすいシャフト。ツアーADシリーズやブルーGは、こちらがとくにすすめなくてもお客様の指名買いで売れていく」(ファーストグリーン/大野雅広氏)となる。
ただし「実際にプロと同じスペックでそのまま打てる人は限られている。特別力のある人を除けば、アマチュアは軽めのスペックを選ぶべきでしょう」(大野氏)。ここで問題になるのは、軽量化するとオリジナルの特性まで変わってしまうこと。シャフトの性能はカーボンシートの巻き方で決まるため、硬さやしなり方など特性を変えずに重量だけを変化させるのは非常に困難だ。事実、同じシリーズのシャフトでも10グラムの違いでまったく別の印象を受ける例は珍しくない。
さて、そこで今年注目を集めそうなシャフトを大野氏に挙げてもらった。一つめはグラファイトデザインのツアーAD M-75、M-65。「隠れ人気のM-85の軽量版、しかもマルちゃん人気も手伝って、期待度が高い」。もともとプロの評価が高かった80グラム台のM-85を丸山茂樹の求めに応じて軽量化したシャフトだ。プロレベルでも4日間のトーナメント期間を通じて安定したプレーをするためには軽量化が有効な手段となるが、60グラム台であればアマチュアが普通に使える重量だ。このシャフトは丸山自身が試打を繰り返して完成させた正真正銘のツアーモデルで、軽量の割に強いボールが打てると、昨シーズン多くの選手が手にした。昨年までは共同でテストを行ったブリヂストンに独占供給されていたが、単体で手に入るようになった今年は丸山の活躍と比例して売り上げを伸ばしそうだ。
三菱レイヨンの新ブランド、ディアマナもトップダウン型のマーケティングで認知度を高めてきた。「あまり多くの選手はフォローできない。ならばと、トップ10に的を絞った」(同社関係者)プロモーション作戦も功を奏したといえよう。「結果的にタイガー・ウッズを含めた世界ランキングの上位10選手中5名が使用しているという事実はどんなコマーシャルよりもアピール度が強い」(大野氏)。昨年10月に発売されたのは80グラム台のS83と70グラム台のS73、フレックスもSとXのみの設定で完全にプロ、上級者に対象が絞られていた。雑誌等でタイガーのニューシャフトとして紹介されたことも手伝って、本社のある豊橋工場の生産ラインをディアマナだけに絞っても追いつかない状態。さらにユーザーやショップサイドから軽量バージョンの発売に関する問い合わせが多いという。待望の60グラム台のS63は、早ければこの3月、発売される予定だが、実は、開発はかなり早い時期から行われていたようだ。
05年の交換用シャフト市場の牽引役となるのは、こうしたツアーモデルが中心になりそうだが、新製品として、フジクラの新ブランド、ランバックスにも注目したい。ランバックスは平織り(2軸)シートを斜め45度で使う新構造をアピールポイントにしている。フジクラによればこの構造によって何層にも巻かれたカーボンシート間のズレをなくすことで、ナイスショットとミスショット時の飛距離や方向の誤差が少ない、いわばスチールシャフトとカーボンシャフトの長所をミックスしたような特性が得られるという。
ツアーでの実績で勝負を仕掛けるメーカーと、構造の目新しさを前面に押し出すメーカー。今年も交換用シャフトのシェア争いはますます激しくなりそうだ。
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