週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。
内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。

　昨年12月14日、民事再生中の裾野CCのスポンサーに同社が選定されると、翌日には会社更生中の鳩山CCのスポンサーに系列の森インベスメント・トラストが選定された。森トラストグループとしては、ラフォーレ修善寺＆CC、ラフォーレ白河GCに加え、オークビレッヂGC、かさまフォレストGC（旧タイホーCC）の買収に続き、これで系列6コースとなった。森トラストグループが、ゴルフ場事業への積極的な進出を始めたのは一昨年12月のこと。東ハトレディスの会場としても知られ、民事再生中の東ハトからオークビレッヂGCの営業権を取得してからだ。この時点でゴルフ場事業を管轄する同社業務管理部では「素材もよく採算のとれると判断したいい物件については、積極的に検討していきたい」との方針を明らかにしていた。

内容の良さで人気のある鳩山CC

　ちなみにこのとき注目されたのが、退会会員に対する実に27.5パーセントという高い弁済率だ。民事再生など法的整理では、90パーセント強のカット率が当然となっていた状況だっただけに、元気な日本企業への待望論にまで発展したものである。

　その後、昨年9月にはやはり民事再生中の茨城のタイホーCCのスポンサーに、4社競合の末に決定。12月1日に成立した再生計画案では、弁済率は第1回配当で4パーセント。第2回配当も予定しており、ここでも高い弁済率を実現している。

　さて裾野CC、鳩山CCともに、アクセスや立地条件など、「投資会社も含めゴルフ場に進出する者にとっては垂涎の的」「04年の目玉ともいえる素材のコース」（某ゴルフジャーナリスト）とされ、実際に水面下では、外資、国内企業を問わず激しい争奪戦が展開された。

　ここでは裾野CC、鳩山CCについて、これまでの経緯をざっと振り返っておこう。

　預託金問題に端を発し、経営会社である株式会社裾野カンツリー倶楽部（大池文夫社長）が、静岡地裁に民事再生法を申請したのは、昨年4月のこと。ところが主力銀行から債権を取得したRCC（整理回収機構）は6月、東京地裁に会社更生法を申請。さらにこれを追う形で、会員30数名も会社更生法を申請する事態に。東京地裁から任命された調査員が債権者にアンケートを実施、その結果、民事再生が中止となり会社更生手続きに移行していた。

　一方の鳩山CCは、親会社の大京が産業再生機構入りすることになり、ゴルフ場事業からの撤退を余儀なくされた。そのため昨年9月、経営会社の鳩山観光株式会社（黒住昌明社長）が、子会社の株式会社東庄ゴルフ倶楽部（同社長）ともに民事再生法を申請したものだ。

　裾野CCについては更生計画案が明るみになるのは、今春と見られているが、鳩山CCについては、すでに再生計画の骨子が発表されている。それによれば、（1）多額弁済、（2）安定経営、（3）プレー権の保証を3本柱に、具体的には次のような内容となっている。

　森インベストメントは、鳩山観光が100パーセント減資した後、1億円を新たに出資。その上で鳩山観光に44億円を弁済資金として貸し付ける。そして気になる弁済率は、やはりここでも30パーセントと高率。もっとも多いとされる額面1400万円の会員には、420万円が弁済される計算になる。ちなみに鳩山CCの民事再生申請前は、150万円から200万円で取引されていた。なお継続会員に対しても、一切、経済的な負担をさせないとし、預託金1400万円の場合、弁済額の80パーセントにあたる336万円を再預託すれば、プレー権が保証される内容になっている。残りの84万円についても現金で弁済されるという。20社ともいわれる複数のスポンサー候補の出現で、買収価格が釣りあがった結果ではあるが、一昨年のオークビレッヂに続き、またしても森トラストが、ゴルフ場市場に一石を投じたことだけは事実だろう。

　外資が日本に上陸して今年で丸5年。両雄であるローンスター、ゴールドマン・サックスとも、標榜していた「5年以内に100コース」は、ほぼ実現可能なレベルに達した。ゴルフ場買収もスケールメリットを求めた「量の時代」から、「質の時代」へと、確実に転換しているといっていいだろう。