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週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。
内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。

週刊ゴルフダイジェスト 3/1
2005/2/23更新
「贈与された会員権の名変料は控除される」
株、土地にも影響及ぼす最高裁の逆転判決
 確定申告の受付開始を2週間後に控えた2月1日、最高裁で画期的な判決が下った。相続で譲り受けた会員権を売却した場合、相続に伴う名義変更料を、取得費用として収入から差し引いて申告することは出来ないとされてきた、従来の取り扱いを否定する、国税逆転敗訴の決定が出た。目前に迫った今年の確定申告ではさっそく最高裁判決に沿った扱いに変更されることは間違いない。

 訴えていた原告は、父親が昭和63年11月に、1200万円で購入したゴルフ会員権を、平成5年7月に贈与によって譲り受け、コース側に名義変更手数料82万4000円を支払って、自ら同ゴルフ場の正会員になった。

 その後原告は平成9年4月にこの会員権を100万円で売却、翌平成10年3月の確定申告で、総額3296万円の所得でしたと申告した。所得税法はかなり複雑で、サラリーマンで給与所得以外の収入がない人なら「給与所得」だけだが、不動産を持っていて賃料収入があったり、会員権や不動産を売却して「譲渡所得」が発生したりすると、各所得の間で損失が出た場合と、それを他の所得の黒字から差し引くことが出来たりと、計算はかなり込み入ってくる。

 この原告も、他にもいろいろ所得があったのだろう。その中で、ゴルフ会員権の部分については、収入は売った値段である100万円、一方支出は父親が買った際に払った1200万円に、父親から自分に名義を書き換えた際に支払った82万4000円を加えた1282万4000円であるとし、1182万4000円が譲渡損失である、という申告をした。

 ところが、税務署は82万4000円は費用としては見なせないので、譲渡損失は1182万4000円ではなく、売った値段と買った値段の差額である1100万円だとし、全体の所得も3296万円ではなく3379万円だと主張。

 おそらく指摘を受けて素直に従っていれば修正申告ということになったのだろうが、この人物は強制的に申告を訂正させられる更正処分という重い処分を受け、過小申告加算税までかけられているところをみると、税務署相手にとことん戦う覚悟だったのだろう。

 個人の税金は、収入から支出を差し引いた差額である「所得」に対し、税率をかけて算出する。支出が収入を上回ったら、税金はかからない。

 かつて高い値段で購入してしまったゴルフ会員権を損切り売却するというケースでは、購入時の値段から売却時の値段を差し引き、その上に購入および売却にかかった手数料なども、費用として差し引くことが出来る。

 ただし、贈与や相続がからむと扱いは変わってしまう。所得税法60条1項では、贈与や相続で資産を取得した人が、その資産を譲渡した場合の譲渡所得の金額計算をする場合、「その者が引き続きこれを所有していたものとみなす」という強い表現を使っている。

 贈与や相続を受けた資産を譲受人が売却する場合には、父親名義だった時期も含めて、連続して保有していたものとみなす、つまり中間で一度所有者が変わったという事実はなかったという扱いをするのだ。従って、相続や贈与に伴って発生する費用があったとしても、無視せざるを得ない、というのが従来の国税の取り扱いだった。

 しかし今回の最高裁判決では、父から子への名義変更手数料も、父と子の保有期間に発生した費用であると認め地裁、高裁で勝訴判決を受けていた国税の逆転敗訴となったわけだ。

 この判決を受け、国税庁では「最高裁判決を受け、現在詳細をつめている」としているが、相続した不動産を売却した場合も含め、今回の確定申告から最高裁判決に沿った扱いに変更されることはまず間違いない。従来の扱いで課税されてきた過去の納税者についても検討中の様で、間もなく取り扱いが公表されるだろう。

 それにしても、わずか82万円の所得の差は税額にすると40万円~50万円前後の差ということになる。

 3000万円を超える所得がある人だからこそ、6年間も裁判で争うだけの体力があったわけで、数百万円はかかったであろう訴訟費用を負担してまでがんばった、この原告の意地は賞賛に値するだろう。

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