今年に入ってミズノ、ブリヂストンスポーツの国内大手メーカーなどが、米国市場のてこ入れ策を相次いで発表した。
ブリヂストンスポーツは、PGAショーでブリヂストンブランドのプロ・上級者用クラブ7機種、ボール1機種(いずれも日本発売未定)を発表した。これまで米国で展開していたプリセプトではなく新たにブリヂストンブランドを立ち上げたのは、米自動車レースの最高峰KARTやF1などモータースポーツで認知された親会社のブランド力を利用しようとの思惑からだ。同時に米国子会社の社名もブリヂストンゴルフと改められ、契約選手のバッグやバイザーにいれるロゴもブリヂストンゴルフで統一された。また、国内メーカーとしては久々の大型契約として話題を呼んでいるのが、フレッド・カプルスとのクラブとボールの使用契約。米国内で人気の高い超大物選手の獲得は同社の並々ならぬ意欲のあらわれといっていいだろう。
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技術の高さではアメリカに負けない |
かつて、飛ぶボールとして評判になったプリセプトMCレディが売れに売れ、一時期米国で12~13パーセントまでボールのシェアを伸ばしたブリヂストンだが、圧倒的な強さを誇るタイトリストの前に、現在は5~6パーセントまでシェアを落としている。クラブはもちろん、アトランタ郊外のボール工場の稼働率を上げること、そして安売り商品のイメージがついて回るブランド力を回復させることが同社の急務であり、そのための戦略商品が米ツアープロ向けのウレタン3ピースボールB330だ。今シーズン、スキンズマッチでカプルスが、PGAツアー開幕戦メルセデス選手権でアップルビーがともにB330を使って優勝を飾っており、2010年のシェア15パーセント獲得という目標に向けてまずは幸先良いスタートが切れた。
また、同社では、西海岸にクラブの開発拠点を設け、
「ゴルファーズドックでフィッティングのデータを集めて、米国人ゴルファーにマッチしたクラブを作り込んでいく」(広報室)考えだ。
一方、ミズノもテストフィールドを備えた米国商品開発センターを今年1月から稼働させている。8年間連続でツアー使用率ナンバー1の座に君臨した同社製鍛造アイアンの評価は高く、複合ドライバーのMP460も上級者層に評判で、販売目標も上方修正を繰り返しているほど。しかし、メーカー間の選手獲得競争により1試合300万円ともいわれるほど契約金が高騰し、これまでのようにツアー使用率を後ろ盾にできなくなった。
そこで、高い評価を維持している今のうちに、米国人ゴルファーのニーズに応えられる商品開発を行うのが商品開発センターの目的だ。あえてボリュームゾーンは狙わず、従来のMPシリーズ支持層であるプロ・上級者をターゲットにし、そこからユーザー層を広げていこうというトップダウン型がミズノの販売戦略。この夏には米国商品開発センターが手がける第1弾のドライバーが発表される予定だ。
これまで日本メーカーが米国市場で成功しなかった要因として、販売形態の違いを挙げるのは米メーカーの日本担当者だ。
「街中のゴルフショップがセールスの中心になっている日本と違って、米国では『グリーングラス』といわれるゴルフ場のプロショップでの売り上げが半分以上を占めます。プロショップはそれほど広くないので、扱えるブランドも限られ、多くのショップで置いているクラブはせいぜい3ブランド。そのトップ3の中に入るのは容易ではない」
そういった意味でも、プロショップを運営するプロに好まれるような商品開発を行う両社の手法は正解といえよう。
一方、マグレガーのマックテックNVGは、日本で開発したクラブを米国をはじめとする世界市場に送り出す逆のパターン。米国マグレガー本社がマグレガージャパンを100パーセント子会社化したのも、日本の開発技術の高さとプレミアム感に目をつけたのが理由。
また、国内メーカーが世界へ積極的に出られないもう一つの要因でもある内外価格差の問題も、開発当初からグローバルモデルとして世界統一価格を打ち出すことでクリアしており、「日本発」がどこまで世界で通用するか注目されている。
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