海外の女子ツアーを、今後一体誰が運営することになるのだろう? というのも、米LPGAのタイ・ボタウ・コミッショナーが、今季、2005年のシーズン一杯で退任することを発表した一方で、レディス・ヨーロピアン・ツアーのイアン・ランデル・コミッショナーが、昨年末に突然解雇され、いまだにゴタゴタが続いているからだ。
ボタウ氏は「個人的には、非常に難しい選択だったが、LPGA55年の歴史の中で、現在がもっともその基礎がしっかりしている。この協会の将来も非常に明るいものであるという事実を考慮すれば、後悔なく、退任することが出来る」と心情を話し、コミッショナーとして7年間在任ののちに、職を退くことになる。
確かに、99年からの7年間で、米LPGAの1試合平均の賞金総額は84万ドルから、140万ドルへと大きくアップしている。また、他の女子スポーツ団体は組織がしっかりしているところが少ないため、米LPGAが「世界最大の女子スポーツ団体」ということになっているが、42歳のボタウ氏が、この時期に退任を発表したことに、LPGA退潮の兆しととらえる人々がいるのも事実だ。
というのも、2月11日から始まった今シーズンのスケジュールでは、年間の賞金総額こそ4330万ドルと過去最高を記録しているが、試合数は31試合と咋年より1試合減っているし、シーズン真っ盛りの7月から8月にかけて、フランスで開催されるエビアン・マスターズと全英女子オープンに出場しなければ、まるまる1カ月、試合が空いてしまうといういびつなスケジュールだからだ。
これは、昨シーズンからアサヒリョクケンを含めた5試合のスポンサーが降りたために起こったこと。ボタウ氏によれば、「ちょうど過渡期になっただけで、構造的な問題ではない」ということになるのだが、内容を見ると、そう楽観視も出来ない。
試合数こそ、1試合減で辻褄を合わせているが、開幕戦が南アフリカから始まり、終盤戦の日本、韓国を含めて、31試合中8試合が米国以外の国で開催されるというものだ。つまり、アメリカでのスポンサーが見つからず、海外に出ざるをえない厳しい状況となっている。
賞金総額にしても、過去最高とはいうものの、ボタウ氏がコミッショナーの期間中に、男子ツアーのほうは賞金が3倍以上にもなっており、男女の格差は広がるばかり。つまり、LPGAの人気が目に見える形で翳るまえに、コミッショナーは転職をしようとしているのではないか、という穿った見方も出ている。
実際、米LPGAでは、コミッショナーの選出委員会を設けて、女性のエクゼクティブなどを中心に後任を捜しているようだが、すでにナイキのジェネラル・マネージャーなど数名の候補者から、「推薦されても辞退する」という声が飛び出しており、後任捜しも難航しそうな雰囲気だ。
一方、レディス・ヨーロピアンツアーの方も、解雇されたランデル元コミッショナーが、不当解雇に対して、裁判に訴える可能性を示唆しており、なにやら泥試合になりそうな雰囲気。そうした中で、事実上、コミッショナー不在の状況が続いているようだ。
要は、日本の宮里藍のように、人気と実力ともに兼ね備えたスタープレーヤーの不在が、海外の女子ツアーを低迷させ、コミッショナー人事に影響を与えているのだろう。
15歳のミッシェル・ウィが、全英女子オープンの招待を受けると発表され、それが大きな話題となっているが、それだけ、15歳のウィにかける、女子ゴルフ界の期待が大きいということなのかも知れない。
|