所属コースでのボランティア作業と引き換えに、タダで3食、宿泊、そして空き時間のラウンドプレーができるという、極めて珍しい会員制度を始めたゴルフ場が現れた。その裏には徹底したコスト削減があるのだが、そんなユニークな制度を考案したのは日大ゴルフ部出身(中退)のプロゴルファーという、これまたユニークな経営者だった。
茨城県の旧CCザ・ウイングスは昨年10月から城里GCという名称で再開。新たに預託金なしの、正会員118万円で会員募集を開始した(定員888名)。118万円の内訳は63万円が入会登録料。そして、残りの55万円が、耳慣れない「予納金」。この予納金はプレーするごとに3000円ずつ当てられる預け金(家族同伴の場合はさらに多額が充当される制度等も企画中)。もともとメンバーフィが平日5000円、土日6450円なので、予納金を当てればまさに小遣い程度でプレーできることになる。また、万が一予納金を使い切れなかった場合も、会員権の譲渡先にその分を買い上げてもらうシステムで、ムダにはならない。
さらに、このコースでユニークなのが「ボランティアワーク制度」だ。
主に自由時間がたっぷりあるシルバー世代の会員を対象に考案したものだが、日中、マーシャルやスターター、ポーターといった軽作業のボランティアをすると一定のポイントがもらえる。そのポイントで3食(従業員食堂)、宿泊(近々ロッジを建設予定)、それと一般営業後のフリーラウンドができることになっている。例えるなら、無給のゴルフ場研修生みたいなものか?
「今後、来場者を増やそうと思えば、間もなく定年を迎える『団塊の世代』向けのサービスを充実させることでしょう。この制度ならお金はかからずに、1日好きなゴルフに関われます。また、クラブに対する帰属意識が生まれ、クラブの価値を高めることにもなるので、興味をもたれるのでは……。1日目にボランティア作業をして、翌日通常プレーといったように使えば有効だと思います」と語るのは、同GCを経営するノザワワールドの野澤敏伸社長(45歳)だ。
同社長は、実家が茨城県でゴルフ練習場を経営していたことからジュニア、そして日大(湯原信光プロの1学年後輩)でゴルフを続けた。日大では卒業を待たずプロを目指して中退。ところが、22歳でプロテスト合格も、じきに実家の関係で会社経営が本業に。現在では、スーパーマーケット、各種飲食店、スイミングスクール、リゾートホテルなど20店舗ほどを経営するまでに成長した。
そして、一時期ゴルフ場の受託運営も行ったところ、「うちのビジネスは徹底したコスト管理で経営しています。その目で見ると、ゴルフ場のコスト管理の甘さに驚きました」(野澤社長)という経験から、同社のノウハウを持ってすれば、ゴルフ場経営は十分可能と判断。そして、取得したのが今回の城里GCだった。
これは本題ではないので詳しくは省くが、同GCでは従来より40パーセント近いコスト削減を実現しているという。もちろん、そのしわ寄せがコース管理に寄せられているわけではない。管理に手を抜かないのは、プロゴルファーとしてのこだわりもあるのだろう。そして、そうした低コスト経営を可能にしたのが、このボランティアワーク制度だ。
「食費、宿泊費などのボランティアコストはわずかなものです。あとは空き時間にプレーしてもらうだけですから。ゴルフ場って、空いた時間とスペースがたくさんあるんです。そこを皆さんに喜んで利用してもらえるサービスを今後も考えて生きたい」(野澤社長)
このところ日本でも市民のボランティア活動は珍しくなくなった。大災害の際には、遠方から身銭を切って、大勢の人が駆けつける社会となった。さて、所属クラブでのボランティア作業はどうのように受け入れられるだろうか?
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