アメリカのプロの間でインターネット・オークションが流行り始めた? といっても、用品を売ったり買ったりするのではなく、なんとインターネット・オークションを通じて、スポンサーを捜しているプロゴルファーがいるのだ。
イーベイ(eBay)というとアメリカ最大手のインターネットのオークション会社だが、先の2月初旬、PGAツアープロのクリス・スミスが、シャツの右袖のロゴスペースをイーベイのオークションにかけたと思ったら、2月下旬からカナディアンツアーやネーションワイドツアーで活躍していたブライアン・ペインが、なんとスポンサーそのものを捜して、イーベイに登場したのだ。
クリス・スミスというのは、02年のビュイック・クラッシックに優勝した35歳のベテランプロ。昨年は69万ドルを稼いで、賞金ランキングで115位となっている。つまりシード権は確保しているものの、知名度が低く、高額のスポンサー契約を望めない立場にいるプレーヤーの一人だ。
そうした中で、スミスと彼のマネジメント会社が思いついたのが、イーベイによるスポンサー捜し。「世界には1億400万人のゴルフファンがいるし、延べ1030万人のギャラリーが試合を見つめています…これは一つのユニークなチャンスです」という謳い文句を並べ、空いている自分の右袖のスペースを売りに出したのだ。
最低落札価格は年間5000ドルからとかで、宣伝効果がどれほどあるかは分からないが、中小企業でも出せる程度の金額で、世界のゴルフファンにアピール(?)できるというわけだ。
年間7000万円以上を稼いでいるスミスにすれば、ほんの小遣い稼ぎということなのだろうが、もう一人のブライアン・ペインの方は、かなり必死の様相。というのも、ノースウエスタン大学時代には、学生のベスト10にも選ばれ、カナディアンツアーや02年のイリノイ・オープンに優勝しているものの、これまでの年間最高獲得賞金は01年の6万2000ドルに過ぎない。ここ数年、ペインは年間4~6万ドルしか稼いでいなかった上に、手首を痛めて一昨年にスポンサーを失い、昨年は自腹を切ってトーナメントに出場していたのだ。なにしろコンピュータ会社に勤める奥さんの収入が頼りだったというから、瀬戸際に立っていたといえるだろう。
そのために思いついたのが、オークションによるスポンサー捜しで、最低落札価格は1万ドル。2万5000ドル以上の落札者には、キャディバッグやシャツなど2箇所のロゴスペースを提供するほか、例えば2万5000ドルのスポンサーなら、今年ペインが稼いだ収入の25パーセントをスポンサーの選ぶチャリティに寄付すると約束している。
「これは誰もが得をするチャンスなんだよ。カナディアンツアーは7試合、ネーションワイドツアーは17試合ゴルフチャンネルで放映されるから、スポンサーにはもちろん宣伝効果があるだろうし、僕自身も、またチャリティ団体も得をするというわけさ」とペイン自身は、今回のオークションのスポンサー捜しに自信を持っている様子。
これに対して3月1日現在、イーベイで名乗りをあげたスポンサーは1件で、1万ドルの入札があっただけ。それでも全くないよりはましで、スポンサーのつかない無名プロたちが、今後続々とインターネットオークションでスポンサー捜しを始めることになるのかもしれない。
インターネットオークションは、アメリカではすっかり定着しているものの、その一方で、年間10万件を越える売買を巡る苦情が消費者センターに寄せられてもいる。この新手のスポンサー捜しのオークション、もしプレーヤーがまったく振るわず広告効果がなかったら、あるいは、苦情の対象になるのかも?
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