国内女子ツアーは例年通り沖縄のダイキンオーキッドで開幕。あいにく今年一番の寒波が沖縄を直撃、2日目には最高気温が9度までしか上がらず、激しい風雨に見舞われたため体感気温は5度。ところがそんな荒天にもかかわらず同大会史上最多のギャラリー(3日間合計2万4693人)が詰めかけ女子プロブームの過熱ぶりを改めて実感させられる結果となった。
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「藍ちゃん見たさ」にこの人垣 |
それはさながら沖縄に突如巻き起こった狂想曲。騒動の凄さを如実に物語ったのが報道陣の数だった。ワールドカップ優勝、ANZレディス・マスターズ2位の好成績を引っ提げ帰国した宮里藍に接触しようとゴルフ関連媒体だけでなく一般誌、テレビ局の取材が殺到。
事前登録した報道陣の数が1000名(実際には大会期間を通して延べ775人が取材に訪れた)に達したため、大会側が当初クラブハウス内に設置する予定だったプレスルームの場所を急遽変更。ギャラリープラザ横の広場に縦30メートル、横10メートル(国内最大級)の200人収容可能な巨大プレハブを建設して万全の体制を整えた。
「例年と比べ様変わりしたと感じたのは取材に訪れたテレビ局の数の多さでした。NHKをはじめとしたキー局全局、沖縄4局、その他ローカル局も来ていてテレビカメラが15台以上並ぶインタビュー風景は圧巻。かつてない盛り上がり方でした」と言うのはダイキンオーキッドのプレス担当、山田大茂氏。
宮里藍が沖縄入りしたときも凄かった。昨年までは出迎えもなく静かだったが、今年は報道陣約40名に加え150人を超えるファンが藍の凱旋に立ち合い、空港は一時騒然。その光景は翌朝のスポーツ紙の紙面を飾った。
混乱が予想されたため試合会場では藍に運営会社の人間が常時3名随行。藍専属のギャラリー整備係も10名を配備した。ちなみにさくら専属のギャラリー整備は5名。昨年までは気軽に応じていたサインも、1人し始めると収拾がつかなくなってしまうため、自粛せざるを得なかった。
ギャラリースタンドが大幅に増設されたことも今回の話題の1つ。昨年まで1番ティグランド付近に100席、18番グリーンサイドに450席が用意されていたが、その数を今年は1番ホール側240席、18番ホール側620席に倍増。ギャラリーバスも昨年の21台から33台へ増便し、簡易トイレの数も55から85へ増設された。
大会を通して天候は不順だったが、特に2日目には沖縄とは思えない厳しい寒さと横殴りの雨にもかかわらず5224人が来場、フェアウェイにカラフルな傘の花が咲いた。通常はギャラリーが色々な組に分散するものだが、その日は藍とさくらが同組だったためほとんどがそこに集結。3日間を通して地元のヒロイン藍が大ギャラリーをほぼ独占する形となった。
グリーンからフェアウェイまで5重6重に取り巻く人混みを見て「娘のプレーを見に来たのに、ギャラリーの方の頭しか見えませんねぇ」と藍の母・豊子さんは苦笑い。「でもこんなに集まっていただいて本当にありがたい」と感激しきりだった。
最終日は人口1万1000人強の村(琉球GCのある玉城村)に人口を上回る1万3148人のギャラリーが押し寄せたため、ゴルフ場に続く県道に時ならぬ大渋滞が巻き起こり、普段なら那覇空港からコースまでタクシーで30~40分のところが、1時間半かかる事態も勃発した。
ギャラリーの中には「藍ちゃん見たさ」に駆け付けたゴルフを知らない層も多く、主催者側は何人かのスタッフのウェアにインフォメーションステッカーを貼らせ、トーナメント観戦初心者のサポートにも配慮した。
「初日の1番に立ったとき、ティグランドからグリーンまで立錐の余地もなく、ぐるっと一周ギャラリーが取り囲んだのを見て鳥肌が立ちました」と言うのは藍の帯同キャディ・小田美奈さん。
大会後、藍はこう言った。
「今回は本当に皆さんに応援されていることを肌で感じました」。この騒動を見る限り、当分ゴルフ界の『女高男低』傾向は続きそうだ。
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