リシャフトするゴルファーが増えるにつれ、一度ヘッドから抜いたシャフトが再利用(リユース)されるケースも増えている。しかし、このリユースには製品安全上の懸念がある。一度抜いたシャフトは、安易に再利用しない方がよさそうだ。
「SG(セイフティグッズ)」マークで知られる(財)製品安全協会は、消費生活用製品のうち、構造・材質・使い方などで身体に危害を与える可能性のある製品に関して、それぞれ安全性の認定基準を作成、基準を満たした製品には「SG」マークを交付。あわせて、同製品の欠陥による人身事故に対しては最高1億円までを補償する制度を設けている。
現在、約130品目に関する安全性認定基準を作成しているが、ゴルフクラブとシャフトも対象品目で、多くのメーカーの製品に「SG」マークが表示されている。
ところが、同協会は先ごろ、シャフトのリユースはもともとシャフトメーカーが想定した使用方法ではなく、実際に安全性を確保できない状態になりうるとして、使用者に注意を呼びかけるとともに、リユースシャフトによる事故については、「SG」マーク表示製品であっても、同協会が保証する被害者救済制度の対象外とすると発表した。
リユースシャフトの安全性が確保できないのは、ヘッドからシャフトを抜き取る際、接合部分に高熱を加えるためその箇所が劣化する可能性があるからだ。同協会の調べでは、50パーセント以上の強度劣化を示したシャフトもあったそうだ。基本的に、ヘッドから一度抜き取ったシャフトは、例え新品であっても再利用しない方が良いようだ。
しかし、リシャフトで人気の藤倉ゴム工業によれば、「リシャフトの増加にともない、なかには気に入ったシャフトを新しいヘッドに再使用される方もいるようです」(広報部)という。
そのため、同社でもユーザーに対しリユースを避けるよう注意しているという。そして、再利用シャフトによる事故については、製品安全協会の補償対象外であることを明記した保証書の作成も検討している。
その一方で、リユースシャフトは「シャフト差し戻し」クラブとして中古ショップで多数売られている。リユースが中古市場に出てくるのは、下取りの際、リシャフトよりもメーカーの標準シャフトの方が値段が高くなるからだ。だから、元のシャフトに差し戻して、下取りに持ち込むケースが多い。
都内の中古クラブも扱う某クラブ修理店によれば、「うちは差し戻しの表示をして、価格も安くして売っています」。というのも、差し戻しを購入するのは、始めからリシャフトを前提にした上級者が中心だから。つまり、差し戻しクラブはヘッドだけを買うようなもの。当然、低価格でなければ売れない。
「しかし、中古ショップの中には、差し戻しクラブと知ってか、知らずか、表示せずに売っているところがありますよ」とこのクラブ修理店の店主は語る。
差し戻しクラブは、以前はオリジナルではないソケットが装着されているといったポイントから判別しやすかった。しかし、最近はリシャフト慣れした業者が増え、専門家でなければ見分けられないクラブが増えたという。もちろん、その場合はシャフトの劣化も少なく、上手に差し戻されているのだが……。
リユース品を掴むのが心配であれば、良心的で、目の肥えた販売員のいるショップに行った方が良いようだ。知らずに使って破損や事故につながっては大変だ。
ちなみに、ゴルファー保険を扱う損保会社に確かめたところ、「ゴルフ用品保険については、リユースシャフトであるか否かを確認することはありません。契約内容どおりの補償をさせていただきます」(共栄火災海上保険・広報室)とのこと。
しかし、人身事故のときは、場合によっては事故原因が調査されることもある。その結果、シャフトのリユースが原因とわかれば、責任の所在が問われることにもなるだろう。
「リサイクル」が社会のトレンドといっても、シャフトだけは要注意を。
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