今年のマスターズは、毎年訪れてくるパトロンたちもびっくりしたことがある。それはなんと、開場入り口に、金属探知機のゲートが立ち並んでいたことだ。
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テロと携帯電話、小型カメラ対策?
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マスターズといえば、新し物好きで、テレビ用のケーブルをコース中の地下に張り巡らしたり、グリーンの地下に温水、冷水が流れるパイプを埋めて冷暖房完備のグリーンを作ったりしている。あるいはメディアルームに、無料のワイヤレス・インターネット・アクセスを作るなど、常に最先端のゴルフトーナメントとしても知られているのだが、これまでは一般のパトロンやテレビの視聴者には、ほとんど見えないところで施設を最新の物に変えていた。しかし、今回の金属探知機には、古くからのパトロン達も驚きの色を隠せない。
「ゴルフトーナメントでは史上初」というこの新ゲート、簡単に言えば、飛行場のセキュリティ・チェックを思い出すのが手っ取り早いだろう。けれどその警備・安全対策は、国際線の搭乗手続きよりも厳しい。
というのも、金属探知機でチェックされるのは同じだが、会場に持ち込める荷物はボータブルの椅子を除いて、小さなハンドバックやポシェット(約12.5センチ×7センチ×7センチ以下)だけ。これ以上大きなものは会場には持ち込めず、預かり所に預けなくてはならなかった。
しかも、金属探知機を通過した後には、チケットの裏に入っているバーコードを読み込んで、誰が入場したか確認するという念の入れよう。
オーガスタの関係者に言わせると「もともと入場ゲートが8つしかなく、混雑していたのでゲートの数を増やすことにした。ついでに、コース内のセキュリティを高めようと金属探知機を導入した」ということだが、パトロン達の噂では、テロ対策に加え、携帯電話とカメラ防止策ではないか、と受け止められている。
アメリカは現時点での戦争当時国で、テロ対策に神経質になるのも分かるし、「ゴルフは、ギャラリーがもっともプレーヤーに近づくことが出来るスポーツだから、これくらいは当然」(マスターズ関係者)という声も聞かれた。
加えて今年はゲートの数が昨年の3倍以上の26になっているのだから、ある意味仕方ないことだろう。
しかし、入場者の一人一人をチェックするのに時間がかかり、「ゲートが増えても、去年より入るのに時間がかかった」とか、「ここまでする必要があるのか」という不満の声も聞かれた。ただし、今回の金属探知機導入で携帯電話とカメラの持ち込みをシャットアウトできるようになったことは間違いない。
これまでは、手荷物検査があっても、携帯や小型カメラをポケットに入れて持ち込むケースが跡を絶たなかった。もちろん発覚すれば、コースからの退場処分を受けるが、それでも重要な場面で、カメラの音や携帯が鳴ったりすることがあったのだ。
ある意味では、完璧なコンデションで試合を開催したいと考えるマスターズ委員会にとっては、テロ対策に神経質になっている今なら、反対の声も出にくいと考えて金属探知機導入に踏み切ったようだが、トーナメント会場のセキュリティが年々、厳しくなっていることは間違いない。
今年のマスターズ開催前には、「プレーヤーの使用ボールをすべて飛距離のあまりでない同一のものに統一しよう」という話がぶり返されていたが、金属探知機導入のことを考えると、マスターズ委員会ならいずれそれくらいのことはやるかもしれない、と思えてくる。
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