今年のマスターズで、フィル・ミケルソンが履いていたスパイクシューズにビジェイ・シンがクレームをつけたことから、再び金属スパイク対スパイクレスの優劣に関心が高まっている。
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雨の日は金属スパイクがいい?
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ここ最近、ゴルフショップの店頭でも、昔ながらの金属鋲のスパイクを見かけなくなった。しかし、タイガー・ウッズや丸山茂樹など、トッププロの足元を見れば、相変わらず金属スパイク。
ミケルソンも雨にたたられた今年のマスターズで、練習時に履いていたソフトスパイクでは、スウィング時に左足の踏ん張りが効かないため、通常の6ミリよりも長い8ミリのピンがついた金属スパイクに履き替えた。
そのピンがグリーンをひっかけてスパイクマークをつけているとシンがクレームを付けた。スパイク鋲の長さにはルール上競技規定がないため、この場合も特に問題はない、というのが競技委員の裁定だった。
一時期、日本のゴルフ場でも、グリーンを傷めるという理由から金属スパイクが締め出されかけたが、急傾斜が多く雨も多いという日本特有のゴルフ環境を考慮し、安全面の問題から金属スパイクの使用は緩和されている。
また、中には自宅からスパイクレスシューズを履いてきてそのままコースに出るというものぐさゴルファーが、外部から芝の病気を持ち込むのを防ぐため、金属スパイクもしくはソフトスパイクの使用を求めているゴルフ場もある。
では、金属スパイク、ソフトスパイク、スパイクレスシューズのグリップ力には、それほどの違いがあるのだろうか。
競技志向のゴルファーやベテランゴルファーの中には「金属スパイクでないと」とこだわる人も少なくない。とくに最近人気を集めているスパイクレスシューズは、芝を噛んでいかにもグリップのよさそうなソールデザインで、グリップ力を競い合っているのだが。
「当社の基準で言えば、やはりグリップ力の高い方から、金属スパイク、ソフトスパイク、スパイクレスという順番になります」(ミズノ広報宣伝室・西田維作氏)。
しかし、そのミズノでも金属スパイクは4年前にカタログから消えており、プロ用の特注品として作られているだけだ。
「確かに、その場で止まったままでプレーするのであれば金属スパイクが最適です。しかし、一般のアマチュアにとっては18ホール歩いて疲れないことが前提ですから、ソフトスパイクやスパイクレスの方がメリットは大きいはずです。体力のあるプロが履いているのは、歩行時の快適性を犠牲にしてスウィング時の機能だけに特化したシューズと考えてもいいでしょう」(前出・西田氏)
一方、ソフトスパイクやスパイクレスも金属スパイク並のグリップに近づけるよう毎年改良が続けられている。右足用と左足用でソールデザインが異なるブリヂストンの「飛びスパイク」は、スウィング中に足裏にかかる力の変化を解析し、最適のグリップ力が得られるようにしたもの。
また、ミズノからは、スパイクレスシューズの弱点だった摩耗時のグリップ力低下を解消するため、ソールがすり減ってもグリップ力が落ちない特殊なデザインの突起を持つ「カドケシ」が発売される。
昨年のスパイクシューズ(金属スパイク、ソフトスパイクを含む)とスパイクレスシューズの販売比率は約65対35といわれているが、今年は各社がスパイクレスシューズに力を入れていることもあり、スパイクレスの比率が高くなると予想されている。ただ、金属スパイクの需要がなくなることはないというのは一致した見方だ。
いずれにせよ、シューズも2足、3足と所有する時代。ウェアやコース、天候などTPOに合わせて履き分けるのが、おしゃれというものだ。
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