米国系投資ファンド・ムーアグループに続いて、同じ米国系ファンド・バブコックアンドブラウン(以下、B&B)も、経営していたJクラブ霞ヶ浦(茨城県、18H)を4月1日付で東京建物のグループ会社・株式会社ジェイゴルフに譲渡、日本のゴルフ場経営事業から撤退したことが明らかになった。
ゴルフ場経営に外資が本格参入してはや5年。ローンスター、ゴールドマンサックスの2大外資による量の獲得競争も一段落。投資家を背負う外資系ファンドが、いよいよその投資の成否を問われる時期への移行を示す動きと言えるだろう。
Jクラブ霞ヶ浦は、民事再生法施行間もない平成12年6月に民事再生手続きの開始を申し立てた、旧日本長期信用銀行の大口融資先だった日本ビルプロヂェクト株式会社の経営コースだったが、同年12月の債権者集会で可決された再建計画案で、B&Bがスポンサーに決まった。
再生計画案は、現在主流になっている預託金のカットとプレー会員権の発行ではなく、預託金額面1800万円に対し無額面株式1株を発行するという、株主会員制への移行を使ったユニークなものだった。
今回の譲渡で株主会員制は廃止されたが、ジェイゴルフからは株券と差し替えに、譲渡可能なプレー会員権が発行される。従来の株主会員権は名変が停止されていたが、「名変再開時期は今年秋口からの予定で、会員からは理解を得られている」(東京建物広報)という。
4月1日以降、コース名を変更せずに営業を続けているが、「コース名を変えるかどうかや、具体的にどのような追加の設備投資を行うかなど、現時点では内容は未定だが、なにがしかのリニューアルは行う方向で検討している」(同)という。
一方、売却したB&Bは、投資先のゴルフ場がJクラブ霞ヶ浦1コースだけだったので、今回の売却でゴルフ場事業からは撤退することになる。
撤退の理由は、「買値が安かったので、投資採算は確保出来ていたが、非常に手間暇がかかるという点で『時間効率』が悪かった。同じ手間暇をかけるなら、商業施設やオフィスビルへの投資に経営資源を振り向けた方が効率はいいという判断」(B&B)だという。
ローンスター、ゴールドマンサックスという2大外資が量の獲得に動いたのとは対照的に、1コースだけの投資にとどまったのは、
「もともとゴルフ場については3コースほどの投資を考えていたが、我々が当該コースを買収して以降、急速に買収価格が高騰したため、結局1コースだけになった」とのこと。
実際、B&Bは御荷鉾CCの最有力スポンサーと言われながら、最終段階で金額面などの条件が折り合わず、買収を断念している。もっともB&Bは、商業施設や事務所など不動産事業への投資が主力。
4月4日には日本の不動産への投資で運用する、総額470億円規模のファンドをオーストラリア証券取引所に上場するなど、日本への投資自体は逆に積極化する方針だ。
だが、B&Bとは対照的に、昨年日本からの撤退を決めたムーアグループは、3月末で日本事務所自体を閉鎖した。同グループのサービサー会社・ミレニアム債権回収は、幹部がムーアから株式を買収、すでにムーアグループから離脱して独立系企業になっている。
ムーアが国内で保有していた4コースのうち、ノースショアCCは昨年11月に韓国系のBANDOグループに売却、小海高原CCもコース側では「売却交渉中と聞いている」と言うが、残る平戸GCと大札幌CCについては「他の投資済み案件をどうするかなどを含め、すべて米国本国が直接管理しているので、売却交渉の有無など詳細はわからない」(ムーアグループ日本事務所の残務整理担当者)。
コース側で「日本事務所閉鎖で何か変更があるという話は聞いておらず、以前同様、営業している」という。
ゴルフ場再編劇が、預託金という重い荷物からの解放を目的にした第1ステージから、経営効率の追求という第2ステージに突入したことは間違いない。
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