いま「ゴルフの本場」イギリスで、ちょっと変わった練習場が流行っている。練習場というよりも、その宣伝文句のように「まったく新しいボールゲーム」といった方が正しいかもしれないが、これまで見たこともないような「ニューコンセプトのゴルフゲーム」が人気だ。
「たぶん、これまでのゴルフ界の中で、もっともエキサイティングな新事業だろう」と、ライダーカップのキャプテンを務めたこともあるサム・トーランスが語るように、この「トップゴルフ」と呼ばれる練習場、他のレンジとはまったく違っている。
どんな点がエキサイティングかというと、ただボールを打つだけでなく、練習場でゲームが堪能できることだ。
ゴルフの「ドライビングレンジ」と言うよりは、ゲームセンターに近い感覚だが、施設自体は普通のゴルフ練習場とほぼ同じ。違っている点は、打席の横にテレビモニターがあり、ボールを打つたびに、飛距離と得点が表示されるシステムになっていることだ。
ゴルフボールの中にICチップが組み込まれおり、誰がどこに打ったかが即座にわかる。25ヤード先から、240ヤード先まで、11のターゲットエリア(グリーン)が用意され、遠くのグリーンのカップに近ければ近いほど、得点が多くなるというもの。20球打って1ゲーム。つまり、20ストロークの合計得点を争うというもの。
一般にゴルファーが利用する練習場だと、その名の通り、ゴルフスウィングのレベルアップのために利用するだけの場所だったが、このトップゴルフなら、コースに出たことのない友人や家族と行っても、皆が一緒に楽しめる。
「練習だけでは味気ない」というゴルファーにとっても、遊びながらゴルフも上手くなるとあって、俄然人気を呼んでいるのだ。
3ゲームすると「ハンディキャップ」も計算してくれる上に、過去の自分の得点や、高得点者のリストもモニター上で見られるというから、ちょうどボーリング場とゲームセンターを足して2で割ったゴルフ練習場、とでもいえばいいだろうか。
「この練習場スタイルに改築してから、以前より売り上げが10倍に増えた」というオーナーの話も聞かれる。
その理由は、「利用者の2割が16歳以下の子供で、オープンしてから最初の2年間は、利用者の半数がゴルフは初めてという人たちだった」(前出のオーナー)というから、ゴルフの普及にも貢献しているようだ。
普段はゴルフ場で本格的にプレーしているゴルファーたちが、一人で技術向上のための練習に利用することも、もちろん可能。
ゴルフボールは、特別に開発したマックスフライのボールで、チップを埋め込んでいるものの重さも弾道も飛距離も、まったく通常のゴルフボールと変わらないという。
つまり、日本の練習場ボールとは異なり、本番同様に練習が出来る上に、打ったボールを見失っても飛距離や方向などわかることから、一人で練習するときでも、通常のドライビングレンジより良い、というわけだ。
値段は1ゲーム(20球)で平均2.5ポンド(約500円)というから、イギリスの相場からすれば高額だが、ゲーム感覚で仲間と楽しめたり、普通の練習場以上の付加価値がある分、十分に元は取れるだろう。
しかも、ビギナーのためにクラブは無料で貸し出してくれるというし、これによってゴルフに興味を持つ人間が増えていることは間違いない。
もともと、この「トップゴルフ」の元になった最初のゲームセンターが誕生したのは、2000年の11月というから、かれこれ5年近くになる。
今では、タイガー・ウッズのマネージメント会社として知られるIMGが、このトップゴルフのインターナショナル・ライセンスを取得して、スペインなどでも事業展開を始めた模様だ。
さらには、アジアやアメリカなど30カ国以上の企業がこの「新しい練習場」に興味を持って、ライセンス交渉にあたっているというから、あるいは日本にお目見えするのも、そう遠くないかもしれない。
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