米カリフォルニア州、ロサンゼルスの警察が、ゴルフクラブの泥棒対策に本腰を入れ始めた。というのも、なんとLA市警のゴルフコンペの会場から、白昼堂々、クラブが盗まれたからだ。
今年4月、警察官たちのゴルフコンペ会場で、参加していた警察官2人が2500ドル相当のクラブ等を盗まれた。となれば、盗まれた当人たちの個人的な怒りもさることながら、LA市警の面子にかけても、クラブ泥棒を捕まえなければならなくなった。
「友人を呼びにゆくために、レストランに行った隙にやられてしまった。その時間はわずかに20秒くらいのもの。キャディバックから15メートル前後しか離れていなかったんだ」とクラブを盗まれた2人の警官の1人が語っているが、その手際のいい手口からして、プロの窃盗チームの仕事だと断定している。
被害警官の1人は、財布や車のキーなどが入ったキャディバッグごと盗難に遭い、総額は約2000ドル。もう一人の警官は、買ったばかりの500ドルのドライバーを盗まれたが、このほかにもその日、同コースでラウンドしていた別のグループのゴルファーが、300ドルのパターを盗まれていたことが後になって判明した。
もともと一般のアメリカ人ゴルファーは、クラブにはあまりお金をかけなかったが、ここ最近になって以前よりクラブに費やす金額が増えてきている。ゴルフクラブが高額化する中でクラブ泥棒も急増しているようで、USAトゥデイ紙が伝えるところに拠れば、年間の被害総額は今年2億ドル(約210億円)に達するだろう、と予測している。
3大クラブメーカーの年間の売り上げは、大雑把に見積もって各社10億ドル弱といわれる。これに他の中小メーカーを加えても約35億ドル。これにはゴルフボールや日本を含めた海外での売り上げなどが含まれているから、それらを差し引くと、アメリカのゴルフクラブのマーケットは、約20億ドルと見られている。
つまり新品、中古クラブを含めて市場に出ているゴルフクラブの10分の1が盗品クラブという計算になってしまうのだ。
別のアンケート調査では、アメリカのゴルファーの10人中6人が、自分のクラブを盗まれたことがあるか、クラブを盗まれた友人がいると答えている。そして、これからクラブが盗まれるのではないかと、心配しているゴルファーが、なんと53パーセントもいるという。
実は、この3月にカリフォルニア州でゴルフクラブの窃盗グループ3名が逮捕され、1200本のクラブが押収されたが、このグループはインターネットのオークション会社、eBayで盗んだクラブを売りさばいていた、と供述している。
日本でも同様だが、かつてはゴルフクラブを盗んでも売る場所が限られていた。パームショップ(質店)では身元を証明しなければならないし、なにより数をさばくことができない。その点、売買のしやすいインターネットの普及とともにゴルフクラブの盗難も増えているようなのだ。
加えてゴルフクラブが高額化している上に、人気のクラブはいくらでも買い手がいるという状況がある。ゴルフ場に行けばそうした高額で人気のクラブが泥棒の手の届くところにいくらでもあるために、盗難事件が後を絶たなくなっているのが現状だ。
「彼ら(窃盗団)は、テーラーメイドのドライバーとか、スコッティキャメロンのパターとか、特定のクラブをターゲットにしている。もっとも、そうしたクラブが入ったキャディバッグであれば、バッグごと持っていってしまうけどね」と語るのは、今回の警察のコンペが開催されたサンタアニタGCのクラブプロ。
要はそうした人気クラブを持っていても隠しておけば、狙われる確率は非常に少ないということだ。
先のドライバーを盗まれた警官は「今度ドライバーを買っても、メーカーの名前が入ったヘッドカバーの代わりに靴下でもかぶせておくよ」と、語っている。これからは安いキャディバッグと、靴下のヘッドカバーが米ゴルファーの流行になるかも?
|