富士カントリーグループの富士エクセレント小野クラブ(以下、小野C)のスポンサーの座を巡り、国内勢のオリックスと外資の雄・ゴールドマン・サックス(以下、GS)が一騎打ちとなり、GSがかつてない好条件を提示している。
富士カントリーグループ各社が昨年暮れから五月雨式に再生手続開始を申立てる中、小野Cが今年2月1日になって再生法申立に踏み切ったのは、1月26日に債権を譲り受けたGSから、会社更生手続の開始を申立てられたためだった。
その後更生手続きの開始決定は下りていないが、再生手続きの開始決定は下りたため、会社側からオリックスグループをスポンサーとする計画案が出される一方、GSからも自らをスポンサーとする再生計画案が出されるに至った。
会社側から提示された条件は、経営会社をオリックスグループが買収する方法で、退会会員への弁済率は1.66パーセント、支払いは計画認可決定確定日から90日以内の一括払い、継続会員に対しては、現預託金(450万円)の2.22パーセントにあたる10万円の新券を発行、据え置き期間は5年。
一方GS案は、経営会社を買収するのではなく、新会社を設立して、新会社が施設と営業権の譲渡を受ける、営業譲渡型。退会会員への弁済率はオリックス案の2.4倍の4パーセント、支払いは計画認可決定確定日から3カ月だからオリックスとほぼ同じだが、継続会員に発行する新券は据え置き期間10年ながら、額面は45万円と、オリックス案の4.5倍。
その上、継続会員には『新会社の新株予約権、もしくは新会社の親会社が付与する新会社株式に対するコールオプション』が発行されるというおまけ付き。
過去のGS案件の弁済率は、日東興業(平成15年2月再生計画認可)で2~2.6パーセント、スポーツ振興(平成15年11月同認可)で3パーセント、緑営(平成16年4月同認可)で0.35パーセント及び1.35パーセント、東和ランド(平成16年6月同認可)で2.5パーセント、西野商事(平成16年10月同認可)で3パーセントといった具合で、緑営の弁済率の低さは突出しているにしても、今回提示した4パーセントという数字は過去最高。
その上に継続会員に発行する新券の額面が現預託金の1割ということは、事実上継続会員のカット率が9割ということになる。
さらに、新会社の株式を取得出来る権利を新会社自身か、新会社の株主になるGSグループのどこかの会社が付けてあげます、というもの。一部株主会員制の導入をも示唆する条件なのだ。
ここ数年、ローンスターと熾烈な争奪戦を繰り広げてきたGSだが、「リスクはとるが値付けにはシビア」というのが業界内の一般的な見方だから、今回の提示条件はかつてない好条件と言える。
オリックスに対する対抗上、オリックス以上の条件を提示せざるを得ないことが大きな理由になっているのは間違いないが、こうまでしてGSはこのコースが欲しいということなのだろうか。
GS側は「個別案件にはコメントしない」としているが、「量の獲得から質の獲得に転換したことの証明」と見る声がある。
その一方で、「日東興業や緑営のように、会社ごと先に買い、あとから再生法や更生法などの倒産手続きで債務をカットするのがGSのスタンダード。富士カントリーもその方法を考えていたが、それが叶わなかった。だからせめて債権を買えた小野Cだけは獲得したい、もしくは獲得出来ないまでも自ら好条件を提示することで、ライバルの出費を増やす作戦では」(業界関係者)との穿った見方もある。
言うまでもなく、借金の額や税金の滞納額、会員の属性などなど、ゴルフ場経営会社は千差万別。それぞれの事情に合わせてスポンサーとして提示出来る条件は異なってくる。
会社側の再生手続きの申立代理人である高木裕康弁護士も、「この条件で計画案が提出されたことは事実だが、まだこれから裁判所が審査をする段階。一般的に、裁判所の審査を経て話し合いが進むうちに、条件が変わったり、あるいはどちらかが下りてしまうということもある。これで確定というわけではない」としている。
だが、過去の例を見ても値付けには比較的シビアなGSが、小野Cでこのような条件を提示したことは事実。激化する一方のゴルフ場争奪競争の先頭を走るGSだからこそ、そのスタンスの変化が戦線の先行きを占う鏡になるかもしれない。
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