バブル崩壊以降、20~30代のゴルフ人口は減少したまま、なかなか回復の兆しが見られない。かねてから業界の大きな課題になっているのだが、レジャーが多様化した現在、料金の割引といった単純な手法では彼らを呼び込むことはできない。そうしたなか、新たな企画を打ち出すゴルフ場が出てきた。
20~30代のゴルフ人口が少ないことは、ゴルフ場関係者にとっての大きな悩みだ。そのためゴルフ場運営コンサルタントの菊地英樹氏のもとには、「彼らを呼び込めるオペレーションのアドバイスを求められることが非常に多くなった」という。
というのも、菊地氏は業界で逸早くネット予約のシステムを提案、導入するなど、いわゆるカジュアルなオペレーションでいくつものゴルフ場再生を手がけているからだ。
菊地氏も指摘することだが、ゴルフ場の中には旧来の運営を見直そうとせず、「とにかく何度かプレーしてもらえれば、楽しさがわかってもらえるはず」といった意識から、割引料金など小手先のサービスで呼び込もうとするコースが少なくない。
だが本来は、若年層にとって何が「敷居の高さ」なのかを徹底調査し、改善できることは根本から改善すべき問題なのだろう。
こうした中、最近、積極的に若年層の誘致する動きが現れている。日本プロゴルフ協会がビギナーを主な対象に、この4月から企画、運営する「アルメックス・ファーストスイング・チャレンジ」もそのひとつ。
これは希望するゴルフ場にプロゴルファーが出張し、3ホールのラウンドレッスンとその前後の練習場レッスンを行うもの。約2時間30分のレッスンで、料金は1人4000円だ。
また、現在78コースを運営するアコーディアゴルフでは、18歳~40歳未満を対象にした「フォーユー・パスポート」という入会登録制(有効期間1年)のサービスを始めた。
入会金3150円で、関東地区の系列9コースを優待料金でプレーできる他、会員限定の競技会開催やメールマガジンの配信といったイベントや特典が企画されている。
「9コース利用できるお値打ちな料金設定ですから、ゴルフ仲間を誘い合っていろんなゴルフ場でプレーして、気にいったコースを作ってみてくださいという提案です」(広報担当者)。3月の募集開始以来、約1800人の申し込みがあったという。
もうひとつ、茨城県の城里GCでも、この層を対象にしたユニークな会員制度を発足させた。
45歳以下が入会可能な「eコラボ会員」という制度。募集金額は正会員と同じ118万円だが、頭金35万円、残りは月1万円の84回払い(金利なし、自動引き落としの振込み手数料1万円込み)。若年層には購入しやすい価格設定になっている。
同会員のプレー資格は正会員と同じなのだが、ただし「ITボランティア」という活動が義務付けられている。
これは会員が持つホームページやEメールで同GCの情報を周囲に発信してもらうというもの。つまり、ITでボランティアの宣伝活動をしてもらう代わりに、金利なしの分割払いで入会できるわけだ。
実は、この制度の裏には今春施行の「個人情報保護法」があった。ゴルフ場が直接営業案内を行えば個人情報流出の恐れがあるが、会員が個人的に行う限り、その心配はないからだ。
しかし、それ以上に、根底には若年層の誘致という狙いがあった。「業界共通の悩みですから、少しでもお役に立ちたいという思いで考え付いた制度です」と語るのは、同GCのオーナーでプロゴルファーの野澤敏伸氏だ。
同氏は「若い層のゴルフ離れは、遊びやレジャーとしてのゴルフしか知らないため、本格的なゴルフクラブに対して敷居の高さを感じたり、いざプレーしたときに肩身の狭い思いをすることも一因なのでは……」と考えた。
そこで同GCではこの会員を利用して、若い世代にコース上で自然とマナーやエチケット、ゴルフの本当の面白さ、醍醐味を伝えていきたいと語る。
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