今年の日本女子オープンでプロアマ戦、それも冠スポンサーが付いたイベントとして実施されることが明らかになった。同大会ではもちろん、各国のナショナル・オープンでも例はないようだ。にもかかわらず実施に踏み切った日本ゴルフ協会(JGA)の事情と波紋を調べてみた。
今年の第38回日本女子オープンは9月29日から神奈川県・戸塚CCで開催される。その大会で、今回初めてプロアマ戦が行われることになった。
昨年まで女子ツアーのワールドレディス(現サロンパスワールドレディス)のスポンサーだったニチレイの「冠」で、アマチュア側は当然、同社招待のゲストということになるのだろう。
JGA主催競技では、日本シニアオープンが2年前からプロアマを行っているが、一般から有料で参加者を募集しての開催。スポンサーイベントとしての実施はこれが初めてだ。
この背景には、JGAの苦しい財政事情がある。日本オープンも含めた3オープンで、昨年は5000万円余の赤字を計上。今年も4000万円弱の赤字予算が提出されている。
「これまでコストカットには随分努力してきましたが、大会の権威を維持するためには、それにも限界がありますから」(大森孝専務理事)という理由からやむなく踏み切ったという。無論、これには理事会で侃々諤々の大議論が交わされたそうだ。
ただし、「日本オープンでの実施ですか? それは議論にも上っていません。来年以降については、3オープンの収支に改善の見通しが着くまでは(プロアマを)実施せざるを得ないと思います。コストカットはほぼ限界に来ていますので、現在は他の収益方法を模索しているところです」と大森専務理事は苦しい胸の内を語る。
それにしてもナショナル・オープンでのプロアマ競技とは……。各国の実情に詳しい某有識者は、「世界中どこを見てもありえませんよ。恥ずかしいですよ」と断罪する。大会自体に冠スポンサーが着いている他国のナショナル・オープンでもプロアマは行われていないそうだ。
もともとナショナル・オープンはその国のアマチュア界を統轄する団体が主催する、プロに門戸を開いた(=オープン化)選手権。アマチュアが競技する大会において、有料の一般プレーヤーと同伴競技をさせる行為は、ルールブックの『アマチュア資格規則』にある「アマチュアゴルフを各種の誘惑から守ること」という「同規則の目的と精神」からも疑問が湧く。
もちろん、実際のプロアマではそのような心配はないのだろうが、先の有識者は「ナショナル・オープンはその国のゴルフのレベルを象徴する大会。だから、細部にまで大会の権威を高める運営をしなければならないはずなのに……」と嘆く。
そして、「だからその『権威』をないがしろにする運営は、厳に慎まなければならない」とも。
実際、日本オープンにしても、同女子オープンにしても、他のツアー競技と比べて、賞金が特別高いわけでも、出場メンバーが格上なわけでもない。
他競技と一線を画し、特別な「権威」が認められているのは、コース選定や厳格な出場資格であったり、タフなコースセッティング、各組に競技委員やキャリングボードが着くこと、そしてプロアマ競技がなく2日間の指定練習日をきちんと用意するといった、良質な運営の積み重ねのお陰だ。
つまり、「競技第一」の精神をまっとうすることで、初めて権威が保たれるということ。
「しかも女子オープンだけというのでは、女子選手にしてみれば『結局今は女子がお金になるからで、JGAは大会の質よりお金を取った』という思いを抱いて当然でしょう」と心配する。
JGAによれば、日本女子プロゴルフ協会(LPGA)とは今年3月からこの件について相談しており、このことについて現在、問題になっていることはないというが……。
また、LPGAのある理事は、「具体的に聞いていないので……、どうなんでしょう。選手の間でもまだ話題になっていませんね」とのことだが、一方で「憤懣やるかたなし」といった上層部の反応も伝わっている。
プロアマ当日の選手たちの表情が、今から気になるところだ。
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