平成15年7月の申立から計画認可確定までほぼ2年。再生計画案のあり方にも一石を投じるなど、多くの教訓を残した鹿島の杜CCの再生計画がようやく事実上決着したようだ。
鹿島の杜は、過去、経営陣による多額の使い込みや、工事代金の不払いを原因とする施工業者・東海興業によるロックアウトなど、数多くのトラブルを抱えてきた。
そんな鹿島の杜に新経営陣が入り、再生手続きの開始を申立てて提示した当初の再生計画案は、返済率は一般債権者、退会会員ともに1000万円以上の大口債権者が0.2パーセント、継続会員は60パーセント、10年据え置きで抽選償還というもの。
この計画案には大口債権者のRCCが反対したため、平成15年12月に開催された第1回債権者集会において、債権者数では会員の支持を基盤に74パーセントを獲得して可決要件をクリアしたが、債権金額では33パーセントとクリア出来ず、2月に再度集会を開催することになった。
その2度目の集会でも債権金額は可決要件ギリギリの51パーセント。RCCが意見書を提出したこともあり、認可決定は即日ではなく1週間後にずれ込んだ。
さらに、この認可決定に対し、債権者2社が『即時抗告』(地裁の決定に不満がある場合に高裁に地裁の決定の取り消しを求める手続き)の申立を行った。そしてこの即時抗告に対し、昨年7月、東京高裁は東京地裁の計画認可決定にノーを突きつける決定を下す。
一般債権者や退会会員と、継続会員の返済率の開きが大きすぎること、さらに抽選償還は年間2~3人しかあたらないため、同じ継続会員間にも開きがあるとし、債権者平等の原則に反する、というのがその理由だ。
この高裁決定は、「ゴルフ場の再生計画案で多用されている抽選償還を否定するもの」と受け止められ、動揺が走る動きも見られたが、「高裁の指摘する通り、条件の差が極端で、可決に至る得票数も微妙。圧倒的多数で可決されていたら、高裁もノーとは言わなかったのでは」といった冷静な見解が次第に主流になった。
その後、会社側は再生法施行後初となる2度目の再生手続き申立を行い、高裁決定に沿う形で計画案を練り直し、抽選償還なし、一般債権者とも返済率を1パーセントに統一した計画案を立てる。
今年2月の債権者集会では会員側の反対に遭うこともなく、今度は債権者数で80パーセント、債権額でも70パーセントの賛成を得て、東京地裁から同日付けで認可決定を受けた。
しかしこの決定に対し、債権者が再度高裁に即時抗告を行ったため、結論はあらためて高裁の決定に委ねられることに。そして5月19日、債権者側の即時抗告を棄却する決定が高裁から下され、ようやく2度目の認可決定が事実上確定した。
一部債権者からは、最高裁に今回の高裁決定を取り消すよう求める特別抗告が申し立てられているが、過去再生法で最高裁が高裁決定を覆した例はない上、この手続きでは高裁の決定を止めることが出来ない。
「万が一高裁決定を覆す決定が最高裁から出た場合には、その時点で高裁決定に基づいて進んでいる手続きを止めてやり直すのだろうが、それは現実にはムリ。高裁の決定が覆らない前提の手続きで、実際には機能していない」(倒産法に詳しい弁護士)という。
会社側の提案に反対をしてきた債権者は複数おり、必ずしも主張は一致しているわけではないが、当初の段階で会社側が、東海興業の債権を取得していたサーベラスの存在についての説明をやや誤ったことも、長期化の原因の一つだろう。
サーベラスは積極的な協力者として、一部運転資金の貸し出しなどを行ったとはいえ、いわゆるスポンサーではない、という点を、明確に説明していなかった。スポンサー不在の中で、現経営陣に対する不信感を募らせて即時抗告に動いた債権者もいたからだ。
いずれにしても、スピードが売りもので、申立から半年強、遅くとも1年以内には決着を見るケースが一般的な民事再生手続きにあって同CCの最長記録はおそらく今後も破られることはないだろう。
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