99年、パインハーストで開催された全米オープンで優勝したペイン・スチュワートが獲得した賞金は、62万5000ドル。それが今年は112万5000ドルになる予定という。わずか6年で2倍近い賞金アップというのも驚かされるが、じつは今週タイガー・ウッズが全米オープンに優勝すると、生涯獲得賞金がなんと5000万ドル(53億円強)の大台に乗るという。
今季すでに3勝し、先のメモリアルで3位タイとなったタイガーの生涯獲得賞金は、4924万3026ドル(6月10日時点)。日本円にすると50億円を超えているのだが、考えてみればこの金額、プロスポーツ界でも桁はずれだ。
プロゴルフ界で生涯獲得賞金が50万ドルを越えるというのは、もちろん史上初。現在2位のV・シンが今年4000万ドルの大台に乗り、現在4205万ドルとなっているが、10年ほど前にゴルフ界の頂点にいたG・ノーマンは1394万ドルで、ランキング27位にまで、落ち込んでいる。
時代は違うが、タイガーが目標としているかのJ・ニクラスの生涯獲得賞金は、わずかに573万ドルにすぎない。360円で円換算すると20億円を超える額になるが、ドルで比較すればタイガーがわずか1年で稼ぎ出す金額と変わらなくなってしまう。
驚くのはこれだけではない。フォーチュン誌によれば、タイガーの獲得賞金は、年収の1割にも満たないとかで、ナイキなどのスポンサー収入を入れると年間8000万ドル、86億円前後にも達しているという。
タイガーがプロ入りしてから10年。まだ29歳で、これまでに800億円前後は稼ぎ出している計算で、32~33歳には、1000億円を超える生涯収入を手にすることになりそうだ。
そうした中で、タイガーがにわかに注目を集めているのが、アメリカの年金問題だ。アメリカの議会では現在、イラク問題よりも国内の年金制度の改革問題に焦点が移りつつあるのだが、「タイガー・ウッズは、年金制度を救えるか?」(USA・TODAY紙)という奇妙な見出しの記事も表れている。
というのも、ブッシュ大統領が提案している年金改革案の中に、高額所得者の年金負担額を増やそうというものがあり、その代表的な例としてタイガーが引き合いに出されているという訳だ。
現在の米国の年金制度では、年間9万ドルまでしか社会保険の税金の対象とならないが、改革案では所得の12.4パーセントを一律に社会保険の税率にしようという動きが出ている。
つまりタイガーは「これまで年間1万1160ドルを社会保険料として支払っていたが、改革案ではこれが一気に年間1000万ドルに跳ね上がる可能性がある」(USA・TODAY紙)ということだ。
もちろん、タイガー1人が1000万ドルを支払ってもどうにかなる問題ではないが、高額所得者たちが同じように12.4パーセントの社会保険料を支払えば、年金は一気に黒字に転じる計算とかで、その代表的な人物としてタイガーが例に挙げられている。
ちなみにヤンキーズのA・ロドリゲスの場合は年間160万ドル、バスケットのS・オニールは220万ドル、女優のジュリア・ロバーツは230万ドルの社会保険料を支払わなくてはならなくなるらしいが、これを見ても分かるように、いまやタイガーは、芸能スポーツ界きっての稼ぎ頭になっている。
これだけの社会保険料を支払うことになった場合、当然、受け取る年金額も多くなる。試算では、タイガーが67歳になった時点で国からもらえる額は、年間590万ドルという計算になる。これにPGAツアーの年金を加えると、軽く年間10数億円には達すると予想されている。
今でもそうだが、老後も含めてもう一生、お金に困ることはないタイガー。あとは二クラスを超える史上最強のゴルファーという名声を手に入れるだけのタイガーにとって、メジャー大会は、これからも特別な意味を持ち続けるだろう。
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