プレパッケージ型の再生計画案ですんなり認可決定を受けながら、最後の最後にスポンサーが逃げて営業停止に追い込まれ、裁判所から再生手続きの廃止決定を受けたゴルフ場の会員が、その裁判所の決定に異議を唱えて提訴する事態になっている。
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豪華ホテル併設の湯ケ嶋高原C
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問題のゴルフ場は湯ケ嶋高原倶楽部(静岡県、18H)。東名高速沼津インターからさらに40分ほどかかるなど、アクセスはやや悪いが、超豪華仕様のホテルやコテージ、テニスコートなどが併設された高原リゾート型のコースだ。
かつての平和相互銀行から多額の融資を引き出すなど、いわゆる『平和相互四天王』と呼ばれた次郎丸嘉介氏率いるオービスグループの系列コースで、昨年3月24日に民事再生手続きの開始を申し立てた。
申し立て時点での負債は総額393億円にのぼり、そのうち預託金は233億円で担保付きの債務が144億円、その上滞納税金は5億円を超えていたが、申し立て時点で既にスポンサーが決定しているプレパッケージ型。
スポンサーはフランスの投資会社であるエルメス・キャピタル・パートナーズ社、運営はCCAインターナショナル、配当率0.3パーセントという再生計画案が、申し立てから半年後の9月の債権者集会で可決され、とんとん拍子にコトは運ぶかに見えた。
ところが「営業譲渡の契約まで締結し、いざ資金の払い込みの段階になったら、エルメス社とまったく連絡がとれなくなり、それきり先方からは何の連絡もない。裁判所もカンカンだった。仕方なく、急遽他のスポンサーを探したが、なかなか条件が折り合わなかった」(再生手続きの申立代理人・羽田忠義弁護士)。
本誌の取材に対し、エルメス社の宇津秋朗代表は、「払い込みをしなかった理由はどちらにあるのかと言いたいが、今は具体的な話は出来ない」と、詳しい反論は避けている。
いずれにせよスポンサー変更による計画案の変更は実現せず、5月9日、東京地裁から再生手続きの廃止決定が下ることに。この決定を受けて、コースも閉鎖されてしまった。
再生手続きの廃止決定が下りると、官報に公告が出され、債権者からの異議申し立てを受け付ける期間が経過すると、裁判所の職権で破産手続きに移行することになる。
現在は破産宣告待ちの状況で、再生手続きの監督委員だった腰塚和男弁護士が保全管理人として施設の管理にあたっているが、コース閉鎖の理由は、ズバリ「運転資金が底を突いてしまったから」(腰塚弁護士)。
「支払いを待ってもらっていた従業員への未払い賃金もあるし、滞納税金も約7億円ある。電気代も数百万円単位で滞納しているため、東京電力から電気も止められそうになっているが、スプリンクラーを使えなくなると芝がダメになってしまうので、何とか止めないよう東京電力と交渉している」(同)状態だ。
そんな状況に業を煮やした一人の会員が5月27日、再生手続き廃止→破産の流れに待ったをかける『即時抗告』の申し立てに踏み切った。「債権者の大多数を占める会員の意向を確認せず、こんな決定を下すのは暴挙」というのがこの会員の主張だ。
会員に対しては昨年7月、スポンサーが決まっているからという説明で年会費を徴収しており、スポンサーに逃げられたのなら、密室で探すのではなく広く会員に情報開示をしてスポンサーを募ればいいことではないか、というわけだ。
また、更生法と違い、再生法では滞納税金は抵当権者同様、別除権者として弁済協定で対応することになるので、あまりにも滞納税額が多いと話し合いが付かず、再生手続きではムリ、ということにもなりかねない。
しかし会員の代理人である西村國彦弁護士は、「スポンサーに逃げられたからといって、安易に再生手続きの廃止決定を下す裁判所の姿勢に警鐘を鳴らしたい。せめて会員に意見ぐらい聞くべき。エルメス社への譲渡予定金額は13億円だったが、金額を見直せば新しいスポンサー候補を探すことは可能なはず。場合によっては更生法の可能性も模索する方法はあるわけで、いきなり破産は安易」だという。
実際、スポンサー候補として数社が名乗りを上げている様だが、この問題、どう着地するのか注目される。
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