今秋にはクラブメーカー各社のSLE(スプリング効果)ルール適合ドライバーが出揃うのでは、そんな噂がまことしやかに囁かれるほどSLEルール問題への関心が高まっている。2005年モデル春商戦たけなわのこの時期、クラブメーカーでは2006年モデルの開発が終盤を迎えているが、2008年を待たずして高反発ドライバーは消えてしまうのだろうか。
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ルール適合クラブの開発が進む |
SLEルールの告知が進み、ドライバーの選択に悩んでいるユーザーも多いが、メーカーも同じように苦慮している。
「最終的にはお客様の動きによってスタンスが決まってきます」(SRIスポーツ経営企画部広報担当課長/藤田英明氏)というように、今後の市場の動向を測りかねているというのが実状だ。
ただ、「ルール適合ドライバーに対するニーズは日増しに強くなっている」(キャロウェイゴルフPRマネージャー/松尾俊介氏)ため、どのメーカーも来春の発売に間に合うよう準備を進めているのは間違いない。しかし、高反発ドライバーの扱いをどうするかということについては歯切れが悪くなる。
「いまの段階では高反発とルール適合モデルの両方を出せるよう平行して開発を行っており、急にどちらかに偏ることはないと思います。アベレージゴルファーにとっては飛ばすことが大きな楽しみですから、いきなり高反発をやめることはできません」(本間ゴルフマーケティング企画室宣伝担当係長/桑木野洋二氏)
これは、ほとんどのメーカーを代表する意見といっていいが、とくに高反発ドライバーのヒット商品を持っているメーカーほど悩みは大きいようだ。「生チタン」こと「JPX」の販売が好調なミズノは、
「来年度からはルール適合モデルへのシフトを考えていますが、すべて適合品に代わるわけではありません。今から我慢して適合品を使うのが得策なのか、今までの高反発技術の集大成といえるドライバーでぎりぎりまで飛ばした方がいいのか判断してほしい。新しいドライバーに慣れるのに半年もかかるというようなプロのコメントも紹介されていますが、皆がそうとは限りません」(広報宣伝部/西田維作氏)と2008年を待たずして、高反発ドライバーが主役の座を追われるのはまだ早いと訴える。
ところで、高反発ドライバーが使えなくなることにより、飛距離がダウンすることを心配する向きもあるが、ルールによる規制はむしろ他の技術の進化を促し、ユーザーにとってもメリットとなることが多いと考えられる。
毎年のようにレギュレーションが改正され、車両規則が厳しくなってもラップタイムが向上し続けているF1がよい例だ。ここ十年来、反発性能を競うあまり、個性を失いかけていたドライバーだが、各メーカーのポスト高反発技術により独創的な商品が生まれる可能性が高い。
プロギアやミズノは独自のコンセプトや技術の応用により、高反発以上の性能を実現できると自信を見せている。
「反発係数を高めること自体には限界が見えていたので、デュオシリーズでは、打ち出し角とスピンをコンセプトとし、初速に頼らないクラブ作りを進めてきた。カーボンとチタンの複合など製造技術やデータの蓄積もあるので、ルールの範囲内でも短期間で結果を出せる」(横浜ゴム広報部/入道晃司氏)
「生チタンの特性を生かし、飛ばすためのボディ構造を考えている。高反発、高弾道、低スピンだけでなく、エネルギー効率を高めることで飛距離を伸ばすことは可能」(ミズノ/西田氏)
また、反発性能を補うために、高性能シャフトに対するニーズもいっそう高まりそうだ。
「新しいヘッドテクノロジーも必要ですが、ヘッドだけ特化した形ではなくトータルなバランスを高めることが大事。シャフトが良くなれば飛ばせません」と言い切るのは本間ゴルフの桑木野氏。
また、キャロウェイの場合は、「ルール適合モデルを求めるのはアスリート系の方が多いので、今後はカスタム対応が非常に多くなるでしょう」(同社/松尾氏)と予測し、現在よりもさらにシャフトバリエーションを増やして高まるニーズに対応する考えだ。
「今までより飛ばなければ新しいものを出す意味がない」と考えているのは、どのメーカーも同じ。これから登場するルール適合ドライバーには、大いに期待をかけてよさそうだ。
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