会員募集当時、新潟中央銀行が預託金返還を保証、後に本当に契約通り保証が履行されて預託金が全額返還された、東軽井沢ゴルフ倶楽部(群馬県)が民事再生手続きの開始を申し立てた。
預託金の返還請求権に銀行保証が付く――。同GCが会員募集を始めた平成8年当時は、新規募集に苦戦するコースが大半だった時期だ。
会員権相場の環境が悪かった上に、平成5年に「ゴルフ場等に係る会員契約の適正化に関する法律」(いわゆる適正化法)が施行され、オープン前に会員募集を行うには、拠出金(預託金+入会金)の2分の1以上の保証を付けなければならなくなったが、現実には保証が付くほどの信用力を備えた事業会社は稀、という状況だった。
そんな中、メインバンクの新潟中央銀行が、預託金返還期限到来から1年間に限って、返還そのものを全額保証するという破格の好条件を得たことで、同GCの会員募集は順調に進み、コースは平成10年9月にオープンした。
同GCは適正化法施行前に開発許認可を得ており、法的には保証なしで会員権募集は可能だったが、現実に会員権が売れたのは、この保証によるところが大きかった。
銀行が行う保証は、限りなく現金に近い資産をがっちり担保に押さえるのが普通なので、預託金の返還を銀行保証するということは常識的にはあり得なかったが、ゴルフ場建設に熱心なことで有名だった超ワンマン社長・大森龍太郎氏率いる新潟中央銀行ゆえに実現した保証だった。
しかしその新潟中央銀行は、オープンの約1年後にあえなく破綻、健全な債権は大光銀行など6つの地銀に引き継がれ、不良債権はRCCが引き継ぐことになった。
このとき国策会社であるRCCは、有無を言わさずこの保証債務も引き継がされたため、平成15年に返還請求期限が到来した際、保証は反故にされることなく無事履行され、約800人の会員全員が預託金の返還を受けることが出来た。
このため、現在の東軽井沢GCは146億円の債務の大半がRCC向け。会員はいないのだから、会員から預託金の返還請求訴訟を起こされるわけでもなく、RCCと話し合いさえつけば、わざわざ民事再生手続きを使う必要はないはずなのに、なぜいま、民事再生なのか。
「メインバンクの新潟中央銀行が破綻した時から、いつかはこういう日が来ると思っていた。これまで任意でのコース売却を模索していたが、なかなか条件が折り合わなかったので、民事再生という手続きをとることで、売却先の選択肢を広げたかった」(同社・牧野孝一社長)という。
同GCの姉妹コースだったプレスCC(群馬)は、2年前の平成15年4月に民事再生手続きに入り、すでに経営はレーサムリサーチグループに移っている。
同GCに計画当初から関わった宮下一東洋前社長は平成15年5月に、そして新潟中央銀行の破綻後、特別背任罪で実刑判決を受けて服役していた大森龍太郎氏も昨年暮に獄中で、それぞれこの世を去った。牧野代表自身、「清算業務を請け負う身」を自認する。
同社では、スポンサーを募ってコースを売却したい考えだが、当該コースにはなんといっても会員がいない。一般に買い取り価格が高いと、継続会員以外の債権者にとっては有利だが、継続会員にとってはプレー権が法的に守られても、後に会員の追加募集などの形で実質的に不利益を被るリスクがあるため、高ければ良いというものでもなくなっている。
だが、会員がいない以上、単純な金額競争になり、売却金額は高ければ高いほど、圧倒的筆頭債権者であるRCCにとってハッピーということになる。言い換えれば、今回の民事再生は、RCCのための処理という側面を持つ。
会員の処遇というハードルがないこのコースに、一体誰が、いくらの値をつけ、どのくらいRCCの懐を潤すのか。すでにスポンサー候補からの打診もあるようで、今後が注目される。
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