6月21日、政府の税制調査会から所得税改革に関する提言が発表されたが、その中身はまさにサラリーマンのフトコロを直撃するもの。しかもゴルフ会員権の損益通算に関する内容も盛り込まれており、実現してしまえば、サラリーマンゴルファーはダブルパンチだ。
サラリーマンの税金は、給与収入から必要経費である『給与所得控除』や、社会保険料、生命保険料の一部などが差し引かれて、課税対象になる『給与所得』を算出、そこへ税率をかけて弾き出されている。
控除の対象の中でも圧倒的に大きいウェートを占めるのが給与所得控除で、年収800万円で200万円、1000万円だと220万円、1200万円だと230万円となっている。
従って、大雑把に計算すると、サラリーマンが払っている税金は住民税を除くと年収800万円でだいたい90万円弱、1000万円で130万円前後、1200万円で170万円強になる。
給与所得控除をまったく無くそうという提案ではないが、控除額が縮小するとそれだけ課税対象になる『給与所得』は増えてしまう。
しかも日本の所得税は、所得が上がれば上がるほど税率が上がる累進課税。控除額が減ったことで、税率が1段階上がる人はかなり負担感が増す。控除が3割減るだけで収入1000万円で13万円、1200万円だと20万円くらい税負担が増える計算になる。
さらに今回の報告書では、何度も浮上しては消えてきたゴルフ会員権の損益通算についても踏み込んでいる。今回は昨年までのような財務省が国民の反応を見るために新聞にリークして書かせるといったレベルではなく、明確に報告書に盛り込まれた。
しかもこれまでのように、絵画、骨董品などとともに贅沢品に入れるというのではなく、『分離課税』にするというまったく別の形での提案になっている。
この方式は株なら株、不動産なら不動産という同一の種類の損失と利益だけで損益通算をしましょう、というもの。すでに不動産と株式、先物取引が分離課税になっていて、例えば1年間に株式で出た損が500万円、利益が600万円なら差し引き100万円が所得に上乗せされ、逆に差し引き100万円の損だと他の所得と損益通算出来ない。分離課税になると利益が出たときだけ税金が増え、損が出ても税金は減らない。
ゴルフ会員権の場合は利益が出るということはほとんど想定出来ないので、実質的に損益通算の廃止につながる。
ただ、この提言通り税法が改正されるかどうかは疑問だ。本来日本の税制は政府の税制調査会(政府税調)の意見に基づいて政府が法案を決め、閣議決定を経て国会に提出されるというのがタテマエなのだが、日本には政府税調以外にもう一つ、『自民党の税制調査会(自民税調)』なる組織がある。
この組織は税務一筋のスジガネ入りの専門家の議員で構成されているのだが、ご意見番組織でありながら、実質的には税法に於ける絶対的な存在でもある。
一般に政府税調が公平性の原則の視点でモノを考えるのに対し、自民税調は政治的な、つまり票を意識した視点でモノを考える傾向が強いこともあり、政府税調の提案を真っ向から否定した例は数知れない。
従って、政府税調は自民税調の意見を拝聴し、自民税調と調整を付けることが出来なければ法案を閣議に提出することが出来ない。
6月29日には自民党の武部勤幹事長が今回の政府税調の報告書について、さっそく「政治センスがない」とバッサリ。都議選を控えていることを意識してか、「自民党とも全く無関係」とも言い切っている。
ゴルフ会員権の損益通算廃止についても「ずいぶん前から導入確実と言われながら、なぜかいつも土壇場で見送りになる」(所得税に詳しい税理士)。消費税引き上げの土壌作りとも噂される今回の提言だが、「増税の前に無駄遣いの削減」は当然。怒れ!サラリーマン!
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