来年、マスターズが開催されるオーガスタ・ナショナルが再び改造を行い、ヤーデージが155ヤード伸びて、7445ヤードでプレーされることになると言われているが、一体、メジャーのヤーデージは、どこまで伸びてゆくのだろう?
というのも、先の全米女子オープンが、女子オープン史上最長の6749ヤードのチェリーヒルズCC(パー71)で開催され、コースセッティングのやり過ぎの声が出ているからだ。
「『ディフィカルト』(難しい)という言葉は、このコースを表現するのに、あまりにイージーな表現だわ」と語ったのは、ミッシェル・ウィだが、優勝したバーディ・キムのスコアが3オーバーの287。
これは98年にパク・セリが6オーバーの290で優勝して以来のハイスコア、過去20年で2番目に難しい女子オープンとなった。
考えてみれば、1978年にアンディ・ノースがこのコースで285の1オーバーで全米オープンに優勝したが、男子の全米オープン史上でこの1オーバー285というのは、過去30年でもっとも高いスコアだった(93年、T・カイトがぺブルビーチで出したスコアも285だが、パー72で開催されたために3アンダーだった)。
その難しい距離の長いコースで、さらにセッティングを難しくしたのだから、文句が出てくるのも当然といえる。
チェリーヒルズCCのあるデンバーは、高地のために「飛距離が10ヤードくらいは伸びていた」と宮里藍は語っているが、それにしてもウィやソレンスタムといったロングヒッターたちにとっては、ドライバーを使えないような設定だった。
例えば、本来ならバーディホールの17番パー5は、アイランドグリーンである上に、その小さなグリーンを硬く速くしたものだから、2オンどころか第3打でグリーンの中央に乗せるのがやっとという状況。
あえていえば、パー5でも11番くらいしか2オンが狙えなかった。ウィは2日目「ドライバーを手にしたのは2回だけ」と語っていたし、M・プレッセルも「フェアウェイをキープするために3番ウッドを多用した」と語っていた。
男子の全米オープンも昨年に引き続き、試合中にグリーンに水を撒くといったアンフェアとも取れるメンテナンスを行ったが、こちらのほうは苦情が出ながらも、「USGAのセッティングは、こんなもの」(タイガー・ウッズ)といったあきらめムードが漂っていた。
しかし女子の方は、視聴率が昨年の68パーセントアップの3・2ポイントと上がった中で、P・クリーマー、L・オチョア、M・プレッセルといった10代、20代前半の少女たちが半ば泣きながらプレーするのがテレビに映り、「可哀想」という声が出ていたのだ。
そうした中で、USGAの内部では、かつてのような深いラフに戻そうという声が出ているという噂を聞く。ここ数年、USGAはラフを短くするかわりにグリーンの速さや硬さを重視してセッティングを行っていた。
もちろん、ラフが短いといっても、ヤーデージが長い上に、止まらないグリーンのために、短いラフでも十分過ぎるほどに手ごわい。まるでマスターズのグリーンのようになってしまい、(男女の)USオープンらしさがなくなっているといった批判の声も出ていた。
オーガスタであれば、マスターズのためにだけ、グリーンを作ることも可能だが、それを一般の古い名門コースでやろうとすると無理が出てくる。
その結果が、試合中にグリーンに水を撒いたり、今年の女子オープンのようにグリーンの表面がスムーズでないのにもかかわらず、早く硬くしたのでショートパットがボロボロ外れる、という事態が起きた。
昨年の全米オープン、シネコックヒルズのセッティングの失敗ほどではないにしても、今回の男女両USオープンのセッティング問題が今後、USGA内部で、スタッフや役員の責任問題に発展する可能性も秘めているといえるようだ。
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