米LPGAの新コミッショナーがようやく決まった。今回の決定は、現コミッショナーのT・ボウトウ氏が今期一杯で辞職することを発表したため、LPGAが特別に新コミッショナーのサーチ委員会を設けて、265名の候補者の中から選んだものだ。
米女子ツアー55年の歴史の中で、7代目のコミッショナーに就任が決まったのは、初の女性コミッショナーであるキャロリン・V・ビベンス(52)という人物。
今年の9月9日から11日まで開催されるソルハイム・カップまではボウトウ氏がコミッショナーを勤めるが、ヒベンス女史は、その間をいわば研修期間に当てる。なるべく早くLPGAの現状を把握し、9月11日以降、新コミッショナーとしての活動を開始する模様だ。
ビベンス新コミッショナーは、ゼロックスのマーケティング部門から1980年代の初頭に、アメリカ唯一の全国紙といわれるUSAトゥディ紙の創刊のために転職し、85年から同紙の副社長として2000年まで活躍した。
その後は、アメリカ最大のメディアサービス社として知られるイニシエーティブ・メディアの北アメリカ部門を統括するエグゼクティブとして知られた人物。2002年には、テレビ業界で「もっともパワフルな女性」として選ばれたこともあるバリバリのキャリアウーマンだ。
「初めて(LPGAから)電話をもらったとき、自分のキャリアが違った方向に行くのかと考えたわ。でも、それから自分のキャリアはどこにあるのかと考え直し、これはかつて自分が求めたことだと気付いたから、夢を取り戻すことにしたの」と就任の感想を語る。
こうした経歴を持つビベンス新コミッショナーのキャリアについては、歴代のコミッショナーの中でも、ピカ一で申し分がないものだ。ただ、ゴルフ界とはまったく別のマスコミ界出身で、しかも編集部門ではなく、広告や経営部門で働いてきたことから、一部には不安視する声があるのも事実だ。
「最初の数カ月は、スポンジになるつもり。多くの人々の話を聴き、いろいろな質問をしてゆくつもりよ。LPGAのすべての要素を理解した上で、何を優先させてゆくか、ゆっくりと考えてみるわ」と言う女史。ゴルフも趣味のひとつで、コングレッショナルCCのメンバーになっており、ハンディ15という腕前。
A・ソレンスタムが大活躍する一方で、P・クリーマーや、アマチュアのM・プレッセルやM・ウィなど10代のプレーヤーたちが気を吐くなど、LPGAの人気は、完全に回復基調にある。その点では、当面大きな問題を抱えてはいない。だからこそ、ゴルフ界とは縁遠い新コミッショナーでも、それほどの不安はないかもしれない。
しかし、今回女史が選出された理由のひとつは、男子ツアーと比べると、テレビの放映や賞金額などで大きな開きが出ていることがある。そのためにLPGAそのものを広告、マーケッティングして、スポンサーにアピールできる手腕能力のあるビベンス女史のような人物こそ、今のLPGAには相応しいという判断が働いたのだろう。
歴代のLPGAコミッショナーには、PGAツアーのD・ビーマンやT・フィンチェムのような強烈な指導力を発揮する人物がいなかった。というのも、男性が強い指導力を発揮しようとすると、女性プレーヤーからの反発が強く、女性たちの中にあって孤立してしまうケースもあったのだ。
そうした意味で、他の分野で成功を収めている同じ女性のキャリアウーマンを採用したのは、正解といえるのだろう。
ところで女史が初めてトーナメント会場を訪れたのは、先の世界女子マッチプレーだった。そのマッチプレーでは、ご存知のとおり、日本の宮里藍が3回戦まで進出したが、その3回戦で宮里を敗った相手は、奇しくもボウトウ現コミッショナーの恋人と噂されるS・グフタスソンだった。
いずれにせよ、来年から米ツアー参戦を表明している宮里は、女性コミッショナーの新体制の下でプレーすることになる。
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