この7月、日米を代表するクラブメーカー2社から相前後してドライバーの新製品が発売された。ブリヂストンとしては初めてSLEルール適合専用モデルとして開発されたツアーステージV-iQ450。かたや、キャロウェイからは日本専用設計、高反発のX-18ドライバー。ルール問題で揺れるゴルフ業界にあって、対照的ともいえる両社のニュードライバーだが、それぞれのねらいはどこにあるのだろうか。
ブリヂストンが今年3月と6月に行ったユーザー調査による比較では、SLEルールに対する一般ゴルファーの認知度は約10ポイント高くなっている。
「次に買い替えるならルール適合モデルを選択肢に入れる」ゴルファーが確実に増えているという調査結果を背景に、ブリヂストンが上半期半ばで投入したのが、V-iQ450だ。
これまで同社では、アベレージゴルファー向けのV-iQシリーズとアスリート向けのXドライブシリーズに高反発の定番品プラス特注という位置づけでルール適合モデルを用意していたが、今回のV-iQ450は完全なルール適合専用設計で高反発モデルは存在しない。
しかしながら、「ヘッドの大型化による慣性モーメントの増加、タングステンウェートの配置の見直しによる重心位置の最適化、ニューXドライブで確立された溶接技術などにより、高反発と同等の飛距離性能を達成している」(同社広報室/星三和子さん)という自信作。
スウィートエリアの拡大によって、飛距離のロスを抑えることを主眼に、一発の飛びよりもトータルでの飛距離アップが図られており、アベレージクラスにとって好ましいタイプといえる。
また、来シーズンから高反発が使えなくなる女子ツアーでもV-iQ450はまずまずの評価を得ている。
「ボールが横にぶれなくなって、前に進む力が強い。飛距離も5ヤードほどアップしている」と証言するのは今シーズン、従来のモデルのV-iQ450からスイッチした茂木宏美だ。
一方、キャロウェイのX-18ドライバーが、日本専用設計、高反発モデルオンリーで登場したことには、ライバル社も驚きを隠さない。しかし、もちろんそこには同社なりの緻密なマーケティングに基づく成算がある。
「よりいいものができて、それに対する需要があれば作っていくのが我々の姿勢です。実際に(すぐにルール適合モデルを必要とする)アスリート系のゴルファーは1割に過ぎませんし、多くのゴルファーは今現在での最高の飛びを求めています」という同社PRマネージャー、松尾俊介氏の言葉を裏付けるように、7月2日の発売日から2日間だけのカウントにもかかわらず、大手ゴルフショップの週間売れ筋ランキングで2位にランクインするなど、X-18は好調な滑り出しを見せている。
ルール限界で実質最大級の460ccヘッドにカーボンクラウンコンポジット構造と現在考えられるほぼ最高のスペックを身にまとい、しかも5万円台という手ごろな価格帯で登場したX-18は、たとえ賞味期限があと2年半と限られていても、飛びを求めるゴルファーにとっては十分に魅力的ということだろう。
先のブリヂストンの調査によれば、一般ゴルファーのSLEルールの認知度は男性6割、女性3割。いずれ統一されるとはいえ、現地点では高反発とルール適合モデルの両方にニーズがあるのは確か。
全体が右へ倣えではなく、各メーカーが独自の判断に基づいて、それぞれのモデルが用意されるのはある意味、業界として健全な状態といえるだろう。
買う側は周囲に惑わされることなく、自分のプレースタイルや買い替えサイクルに合わせたドライバー選びを心がけたい。
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