今、ペット産業に熱い視線が注がれている。マンション、ホテル、デパート、レストラン……、かつては「ペット厳禁」だった施設が『ペットOK』で集客につなげ始めた。ゴルフ場でも、最近「犬連れラウンドOK」のコースが現れ出した。この動き、今後も広がるのだろうか。
今や「ペットは家族の一員」という家庭は少なくない。矢野経済研究所がこの6月に発表した「ペットビジネス2005」調査によれば、04年度のペット関連総市場の規模は、前年度比2.9パーセント増の1兆278億円になる見込みで、この6年間で市場規模が20パーセント以上膨らんだことになる。
また、ペットフード工業会が昨年度実施した「全国犬猫飼育率調査」では、全国の飼育頭数は犬1246万頭、猫1037万頭にものぼる。
こうした状況からペット向けサービス業が広がるのも当然の成り行き。じつは、ゴルフ場でも愛犬連れでラウンドできるコースが現れ始めた。
その先駆けとなったのが、きぬがわ高原CC(栃木県)。5年ほど前から乗用カートにリードで結ぶことを条件に、愛犬同伴プレーをOKにした(付設コテージの宿泊も可能)。
すると、これが口コミで愛犬家ゴルファーの間に広がって、利用者が年々増加。「リピーターを中心に、休日には平均で5組くらいの利用者がいらっしゃいます」とのことだ。このゴルフ場では犬連れのラウンドは、当たり前の風景になっている。
同じ栃木県の喜美の森GCも乗用カートから犬を放さないことを条件に、犬同伴プレーを認めている。
ここは敷地内に広々としたドッグランがあるほか、付帯ホテルにはペットも入れるレストランや露天風呂まである。愛犬家にとっては嬉しすぎるゴルフ場のようで、週末には2~3組の利用があるという。
茨木県の鹿島の杜CCは昨年から、周囲に迷惑をかけないことを誓約する「ペットポリシー」の書面にサインした上で、コース上ではリードなしに愛犬を同伴できる。
昼食もレストランのコンペルームで犬とともに食事ができ、利用者が増えつつある。「先日、ペットの専門誌に紹介されたら、問い合わせが急増しました。うちは今、会員権(48万円)を販売しているのですが、この魅力で購入された方もいらっしゃいました」(平井康夫支配人)。愛犬とラウンドできるなら48万円は高くないのだろう。
こうした「ペットは家族」という人たちのために運営されているペットの医療共済制度のひとつ、「アニコムどうぶつ健保」のアニコムインターナショナル株式会社では、9月11日にチャーミングリゾート那須グリーンCCを舞台に、愛犬同伴のコンペ「アニコムピクニック~ホール・イン・ワンワン」を開催する。
9ホールを借り切ってのハーフラウンドのコンペで、フェアウェイを愛犬とピクニック気分でラウンドできるようになっている。こちらも新聞で紹介されると、さっそく問い合わせが増えているそうだ。
ところで、こうした愛犬家ゴルファーの願いに応えるゴルフ場が増えつつある現状に対し、「伴侶動物(ペット)の適正飼養と動物愛護精神の啓蒙普及活動のためのイベントや、適正飼養に関する相談、情報提供」を行っているNPO法人「Knots(ノッツ)」の勝田千恵美事務局長は、「だからこそ、これからは飼い主の飼養マナーがより大事になります」と注意を喚起する。
これまでもペットOKにしたレストラン等が、飼い主のマナー違反のためにペット入店禁止に変更され、せっかくのいいムードに水を差す例があったという。「自由」の裏では、必ず「責任」が問われるということなのだ。
ゴルファーならば、ペットもパットも慎重に。
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