今季前半の男子ツアーが終わった。昨年末のアジア・ジャパン沖縄オープンから数えて29試合中14戦を消化し、そのうち7試合で初優勝が飛び出す展開は、裏を返せば『横綱不在』を表している。
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韓国勢ではS・K・ホがピカイチ
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宮里聖志が地元、沖縄で優勝した初戦から3カ月。3月の東建ホームメイトカップも高山忠洋が初優勝に歓喜した。
つるや、中日クラウンズはベテラン、尾崎直道が連勝、日本プロと、その3週後のJCB仙台は韓国の実力者S・K・ホ。
マンシングの藤田寛之、ツアー選手権の細川和彦、セガサミーカップの林根基と復活Vも飛び出したが、広田悟、C・キャンベル、野上貴夫、高橋竜彦と、やはり初優勝が目白押しだった。
理由のひとつは、ここ3年間の賞金王である片山晋呉、伊沢利光、谷口徹の3人が1勝もしていないという異常事態が挙げられる。
8月6日時点の賞金ランクでも片山が12位、谷口33位、伊沢は34位。これではツアーを盛り上げるどころではなく、残念ながら自分のことで精一杯というのが実情だろう。
こうした過去にはなかった男子ツアーの現状について、マスターズ、全英オープン等の出場経験も持つツアーの大先輩、陳清波プロはこう語る。
「初優勝が多く、韓国勢が強い。そこなんですよ、日本の選手が考えるべきことは。伊沢選手、片山選手など国際試合に出ている選手が多いのに、何で負けてしまうのか。やる気がなくなるとか、何かいけないところがあるんじゃないかな。メジャーの舞台で結果が出ないのも、選手そのものの技術ではなく、精神力や、プレッシャーでしょう」と、手厳しい。
昨年体調不良だった伊沢は別にしても、片山、谷口はメジャーを含めた海外遠征があるため、国内試合の調整に失敗したのだろうか? しかしこれもトッププレーヤーなら乗り越えなければならない壁だろう。
「私も経験があるんだけれど、メジャー大会の後はスウィングのタイミングがバラバラになっちゃうんだ。時差ボケもあるし、体調も崩してしまう。でも、練習してどこが悪かったのかを突き止めないといけない。元に戻るまで半年くらいはかかるけれど、それでもやらなくちゃ」(陳プロ)と、一流プロなら誰でもこれを克服している。
この3人の不調もあるが、AON時代の後の日本ツアーは『横綱不在』の時代が続いている。
「AONの頃のように、横綱に対してみんながかかっていくようになるまでは、今みたいな感じが続くのでは。「誰が先に横綱になるか、だね」(陳プロ)と、いまだ発展途上のようだ。
女子ではメジャー4試合のうち2つのタイトルを韓国の新星がさらっていく勢いだが、日本男子ツアーではホ、そして初優勝のi・E・ジャン(三菱ダイヤモンドカップ)が頭角を現している。
これについて陳プロは、「後押ししてくれる人々に対する心構えとか自覚の問題じゃないのかな。スポンサーなどにこれだけしてもらえば、やらなくちゃ、という恩返しの気持ちがショットに表れる。誰のためでもない。国のためでもない」という。
恵まれた環境でプレーするのが当たり前だと思っている日本選手には、そういう気持ちが希薄なのかも知れない。
同じ台湾の林の優勝にも触れ、「その次の試合に注目していたんだけど、41位タイ。疲れもあるし、安心したのかもしれないけど、あれはいけませんね。悪くてもベスト10に入らなくちゃ。30年前を見てごらんなさい。優勝したら必ず次も上位に入っていた。恥ずかしいスコアを出さない。それが本当の実力者というものです」とピシャリ。
こうした声を後半戦でどうひっくり返し、女子ツアーに流れていくゴルフファンを取り戻すのか。
秋口にはタイガーも含め、招待外人選手が大挙来日するだけに、ますます気を引き締めた戦いをファンは望んでいる。
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