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週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。
内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。

週刊ゴルフダイジェスト 9/20号
2005/9/15更新
2年振りの優勝で甦った伊沢利光
専属キャディから見た苦難の復活劇

 先の「アンダーアーマーKBCオーガスタ」で777日ぶりの優勝を果たした伊沢利光。01年、03年、賞金王に輝きながら、昨年は原因不明の微熱症状に悩まされ勝利はおろか、賞金ランクも26位に低迷。今季も序盤は腰痛、風邪などで、不振が続いた。
 今回の復活優勝を「素直に嬉しい」と喜ぶ伊沢。もう一人、心の底から喜んでいる男がいる。それは96年から伊沢の専属キャディを務めている『ナオちゃん』こと、前村直昭さん。絶好調のときも、不調のときも常に間近で伊沢を見てきた前村さんに、復活までの道のりを聞いてみた。


お待たせ!

------KBCオーガスタは2日目、3日目も首位をキープ、最終的には2位に5打差をつける、ぶっちぎりの優勝でしたが。

前村
 3日目が終わって、周りの人から「余裕ですね」なんて言われましたけど、僕らは結構緊張していましたよ。

 特に最終日、「これで負けたらどうなるんだろう」と思って。最終日の18番のティグラウンドに来て、「ここでティショットをミスしてもOBさえしなければボギーであがれる」とちょっと安心。でも本当にホッとしたのは18番グリーンにあがったときですね。

------伊沢選手は体調不良のとき、「時期が短ければまだしも、何年もだったから落ち込まないわけがない」と言っていましたが、そばで見ていてどう思っていた?

前村
 確かに体調は不調でした。でも不調といっても、スウィング自体は悪くなかったと思います。ドローを打つのか、フェードなのか。いろいろ試行錯誤して変えてみたり、タイガーみたいにキッチリ構えて、なんて基本に忠実になろうとするあまり、技術的に少し迷いが起きたのかも知れませんね。

 変えてみても、慣れなくて逆球が出たりしてましたから。でも僕は「なにかヒントがあれば(好調時に)戻ってくる」と信じてましたから、変な焦りはなかったですよ。

 もちろん伊沢さんがイライラしたりすることもありましたが、僕は「仕方ないなー」と思っていましたし、プレーが終わってから一緒に遊んだり、パチンコにいったりすれば、すぐ忘れてしまう(笑)

 伊沢さんって、カーッときても、風呂に入ったり、コースを出ると、すぐに気分転換できるんです。

------伊沢選手は「アイアンショットがキレた。それが優勝の要因のひとつ」と語っていましたが。

前村
 実は火曜日の練習ラウンドで、あまりショットの調子がよくなくて、5番ホールくらいで伊沢さんが「もう帰る!」って言ってたんですよ。試合の2週間くらい前から、万全の準備をしていたから我慢できなかったみたい。

 僕が「本当に帰っていいんですかぁ。なにかヒントが見つかるから練習場行きましょうよ」といって練習場に行った。

 そこでスタンスをオープンにして、フェースを少し開いてアイアンを打ってみたんです。「バンカーショットみたいだね」なんて言いながら、遊び感覚で。この打ち方が思ったところに球が出て、いい感じでフェードしてくれる。

「でも、距離はどうなんだ?」ということで、水曜日のプロアマでラウンドしてこの打ち方をしたら、ふだんと一緒か、それよりも飛んでいるくらい。この打ち方が4日間通してのアイアンショットのキレを生みましたね。

 初日、バンバン、グリーンを狙うショットがピンを刺してて。「こんなにピン刺したの何年ぶりですかねー」と言ったら、「本当だなー」と言ってましたから。

 今回の優勝でわかったことは多分、感性というか感覚というか、あまり基本とか型にはめようとせずに、伊沢さん流のスタイルを見つけて、それを貫けたから強かったんだと思います。

※          ※            ※

 かつて前村さんがマンションを購入したときに、

「ナオが家を買ったから、そのローンが払い終わるまで、僕は試合で活躍しなければいけないでしょ」

 と伊沢に言わせるほど、全面的に信頼されている前村キャディ。

「賞金王が見えてきた」と語る伊沢のこれからの活躍が、ファンと前村さんを大いに喜ばせることは間違いない。

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