12月に開催が決まった新規イベント「日立3ツアーズ選手権」(9~10日、千葉CC梅郷C)は、国内男子、同シニア、同女子の3つのツアーが一同に会し、技を競うという画期的なもの。米ツアーでは恒例のものとなっているが、日本ではもちろん新たな試みだ。
それぞれのツアーから賞金ランク上位選手と会長推薦の計4名が出場。「なるべくセカンドショットの番手が同じになるように、それぞれのティグラウンドを選んでプレーする」(大会競技委員長・山中博史JGTO競技運営シニアディレクター)という設定で、9ホールごとにスコアを競う試合形式だ。
性別、年齢を問わず、同じコースで戦えるゴルフという競技ならではのもので、生涯スポーツ、国民スポーツとしての普及を旗印に掲げる各協会にとっても、絶好の舞台となるのは間違いない。
開催への経緯は、「島田幸作会長(日本ゴルフトーナメント機構:JGTO)、長田力会長(日本プロゴルフ協会:PGA)樋口久子会長(日本女子プロゴルフ協会:LPGA)の3人が、1~2カ月に1回くらいのペースで行っている食事会でそんな話になったようです」と、関係者は証言する。
広告代理店やテレビ局主導の企画でイベントが生まれることの多い日本のゴルフ界では珍しい形だが「3ツアーズという企画が暖められていた中でのこともあり、すんなり決まったようです」(前出の関係者)
また特別協賛の日立グループは、97年までJGTOツアーのゴルフ日本シリーズをスポンサードしていたが、98年以降はトーナメントから離れている。
だが「1月頃(3つの協会側から)お話があり、3月にはスポンサーが決まった。日立さんも今度は普通のトーナメントではなく、社会貢献という形で考えていらしたようなので、この大会ならば、ということでした」(博報堂DYメディアパートナーズ、越山剛大会プロデューサー)と、タイムリーでもあったようだ。
「もう1年以上は続いているでしょうか」(JGTO広報ディレクター、田中謙二氏)というこの食事会は、お互いの交流を深めるためのもの。
元々はPGAの女子部から独立したLPGAはとにかく、クーデターのような形で分離してからわずか6年目のJGTOは、PGAとギクシャクした関係の時期もあったが、長田会長の就任以来、島田会長とは頻繁にコミニュケーションを取っており、それが始めて表立った形となったようだ。
大会にとって当面の課題はただひとつ、目玉選手を本当に出場させられるかどうかだ。シニアも含めた男子ツアーだけでは集客に不安があるため、LPGAツアー、特に宮里藍の動向に大きく左右されることになる。
宮里次第で、集客数や報道などの規模が桁違いになるため、趣旨である底辺拡大、チャリティーの金額にも影響が出るからだ。
また、女子はシンガポールで行われる世界選抜VSアジアの女子ゴルフ対抗戦「レクサスカップ」(9~11日)とも日程がダブるが、「こちらには何のお話もないことですので、もちろん3ツアーズに選手を出します」(LPGA事務局)とのこと。
関係者も「決まったのも遅かったし、どの国の協会からも公認されていない。今年は日本の上位選手出場が難しいこともスポンサーは理解している。アジアでの宣伝活動がメインのイベントでしょう」と打ち明けている。
各協会がどれだけ選手を出場させられるかについては、未知数だ。それぞれの会長は
「5月に選手には大会について説明してあります。怪我ややむを得ない理由のない限り(資格を持つ選手は)出場します」(樋口会長) 「1、2位は必ず出場します」(長田会長) 「資格ができそうな(上位に入りそうな)選手にはサインをもらっている」(島田会長)
と言ってはいるものの、準備期間も少なく、急に決まった大会だけに、選手に余り無理強いできないのも事実だろう。
スポーツ選手の社会貢献、後進育成という意識が少しづつ浸透しつつある現在、トッププレーヤーがずらりと並び、男女、そしてシニアの競演となることを祈りたい。
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