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週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。
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週刊ゴルフダイジェスト 9/27号
2005/9/21更新
越前CCを買収した外資GSグループ
「会社分割」を活用した新たな動き

 減損処理をすませたばかりの越前カントリー倶楽部(福井県)が、『会社分割』の手法を使ってゴールドマン・サックスグループに売却されることになった。減損の強制適用に伴い、系列コースのあり方を真剣に検討する上場会社が相次ぐ中で登場した、新たな手法と言えそうだ。

千趣会が手離した越前CC

 越前CCの経営会社は千趣会ゼネラルサービス株式会社。通販大手の千趣会の100パーセント子会社だ。

 12月決算の千趣会は、本来強制適用は平成17年12月期ではなく、次の18年3月期から減損の強制適用が始まるが、1期早い今期に処理をすることを表明、今年6月の中間決算で既に減損を実施している。

 もっとも、今回のゴルフ場の減損処理で発生した損失はわずか17億3000万円。今期通年で32億円程度の経常利益を稼ぎだす計画なので、もともと当期利益は2億円と、赤字にはならない予定だった。

 越前CCは、第一次オイルショック後に、頓挫しかけた建設予定のコースを買収したもの。底値で取得出来ている上に、バブル期に豪華仕様のクラブハウスに建て替えるということもしていないことが大きく影響している。

 オープンも昭和57年と、バブル前。会員は1000名程度で、預託金総額はわずか13億円強。470億円を越える自己資本の千趣会グループにとっての負担は軽い。

 12月1日のゴールドマンサックスグループへの譲渡までに、会員に対しては千趣会ゼネラルサービスが預託金を返還、倶楽部は解散するが、入会金50万円を支払えば、無額面で譲渡可能なプレー会員権を取得出来る。

 バブル期に建設したコースだったら、帳簿価格が最低でも数十億円、100億円を越えるケースもザラ、減損を実施すると、数十億円~100億円近い損失を出さねばならない上、その巨額の取得価格に匹敵する額の預託金も抱えているのが一般的。減損による損失額も、預託金の額も十数億円というのは、『バブル組』の上場会社にとっては何ともうらやましい話だ。

 その上、今回、減損処理を済ませたコースのゴールドマンサックスグループへの売却が決まったことで、納税額を減らせるため、当期利益が4億円ほど増える。

 越前CCの経営会社である千趣会ゼネラルサービスは、ゴルフ場経営以外の事業も手掛けているため、『会社分割』という手法を使い、千趣会ゼネラルサービスからゴルフ場事業だけを継承する別会社を作り、その別会社の株式をゴールドマンサックスグループに売却するのだが、これが4億円ほどの節税効果を生むのである。

 減損処理は、会計上、巨額の赤字が出るにもかかわらず、その損失は、税務上は損金と見なしてもらえない。

 税務上は売却損など、顕在化した損失しか損金として認めないため、有価証券や固定資産の評価損失は、その分が利益ともなされ、そこに相当する税金を支払わなければならない。

 会計上は巨額の赤字が出るのに税金はマケてもらえないという、まさに踏んだり蹴ったりの処理なのだが、減損を実施しただけでは支払わざるを得なかった税金が、第三者に売却することで支払わずに済むことになるのだ。

 ただ、一見すると越前CCが千趣会グループにとって重い負担になっていたようには見えないが、なぜ売却なのか。

「本業に経営資源を集中させるため」(千趣会広報)というのがその理由で、ここ2~3年こそ順調に見える千趣会も、平成12~13年当時は赤字が続き、リストラを実施したこともある。少しの油断も禁物ということなのだろう。

 減損の強制適用は、上場会社が先送りしてきた預託金問題の抜本的解決に、手を付けるきっかけを作ったと言えるだろう。

 減損で出る会計上の赤字、税金、そして預託金問題という、3つの宿題は相互に絡み合う。明らかに体力がない親会社は、系列ゴルフ場の法的処理に踏み切らざるを得ないが、微妙な場合は検討する余地を生む。

 3月期決算企業の中間決算が出始める10月以降、知恵を絞ったユニークなアイデアがまた出てくる可能性が高い。

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