7454ヤード、パー71。かつては考えられなかったようなセッティングが、国内ツアー、フジサンケイ・クラシックで行われた。舞台は富士桜CC(山梨県)。昨年まで女子ツアーを開催していた同コースは、男子の開催決定とともに大改造に着手。長期間クローズして大会に備えたのには、理由があった。
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厳しいセッティングがプロを鍛える |
河口湖から程近い標高約1000メートルの土地は、米国コロラド州ほどではないにせよ、空気が薄いため通常よりボールが飛ぶとは言え、96年ジュンクラシック(7358ヤード、パー72)を超える史上最長の設定だった。
メジャーを見渡しても距離が長くなる傾向は顕著だ。今年の全米プロの舞台、バルタスロールGCはメジャー史上最長の7392ヤード(パー70)
毎年、マスターズが行われるオーガスタナショナルGCもコース改造に改造を重ね、来年は7445ヤードになるという。そんな流れの中での7454ヤードだった。
その中で13アンダーを叩き出し、7打差圧勝で初優勝した丸山大輔は、部門別ランキング・ドライビングディスタンス44位(平均288.21ヤード)。ツアー平均飛距離がおよそ275ヤードの中では、飛ぶほうに入るが、ずば抜けているわけではない。それだけに、距離に関しては客観的だ。
「確かに富士桜は(標高が高くて)飛ぶから、あのくらいの距離は必要だと思う。今後、コースが長くなっていくのは仕方ない。短いとパッティングコンテストになったり、極端に狭いとゴルフが違うものになってしまう。僕たちは与えられた中でやるしかないが、正直、もっと長くしなくちゃいけない試合もある」と、現状を分析する。
ツアーを取り仕切る日本ゴルフツアー機構(JGTO)の競技運営ディレクターで、同大会を担当した遠藤誠氏は「ツアー全体としては、距離が長くなっていくか、パーが減っていくかだと思います。今回はコースの協力で、ここまでこぎつけられた」と解説する。
主催者側のプロデュースを担当した戸張氏が、こう補足した。
「現在の男子プロの飛距離と用具、技術の進歩を考えると、既存のコースの距離ではツアーには短すぎる。パターを除く13本すべてのクラブが必要となるセッティングが理想。 世界を見回せばショートアイアンでグリーンを狙うホールなら、はじから3ヤードの場所にピンが切られることもあり、セカンドでのスピンコントロールまで要求されている。 そんなコースは日本には皆無。こういうコースセッティングを少しでも増やす努力をしないと、世界から取り残されてしまう」
遅まきながら、グローバルスタンダードに照準を合わせたというわけだ。
戸張氏の言うように欧州、アジア両ツアーがひとつにまとまる一方で、米ツアーは着実に裾野を広げ、厚みを増している。
シーズン短縮も本決まりとなり、そのオフとなる秋口にはゴルフ市場が爆発的に広がりつつある中国や韓国でのビッグトーナメントが企画されている。
例えば今年、11月に上海で行われるザ・HSBCチャンピオンズは、世界ランク上位50人と欧、米、豪州、南アの4ツアーの優勝者が出場するビッグイベント。
これが日本の太平洋マスターズとぶつかる。実は日程が決まってから日本ツアーに話があり、断ったといういきさつがあるが、この時点ですでに日本は想定外だったようだ。
タイガー・ウッズらビッグネームが出場を表明。これまでインターナショナルツアーと銘打ってきた太平洋マスターズは立つ瀬がない。今こそこの現状を直視するときだろう。
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