かつては「ヤワで使いものにならない」と言われたメーカー市販の純正シャフトが、最近ではクラブの性能を左右する重要パーツとして、交換用シャフトに遜色ないほど性能が向上している。
プロのトーナメント会場やオフのテストでは、シャフトメーカーはクラブメーカー以上に熾烈な競争を行っており、多くの選手はプロトタイプといわれる先行開発モデルや、専用にチューニングされたシャフトの提供を受けている。
しかし、細川和彦や尾崎直道など男子プロの一部や女子プロの中に、普通に売られているメーカー純正のシャフトで戦っている選手も多い。
ツアーADのプロトタイプから、スリクソンW-05ドライバーに標準装着されているシャフトを使い始めたのは細川和彦。
世界選手権NEC招待に出場した際に、欧米の選手の多くが日本人よりも軽いシャフトを使っているのを目の当たりにして、以前より約10グラム軽いダンロップ・オリジナルのSV-3003Jを選択した。
米国から帰国早々のKBCオーガスタでは強行出場の疲れをものともせず初日64と大爆発、ティショットの飛距離も10ヤード近く伸び「軽量化効果」を実証して見せた。
いくらアスリート向きとはいえアマチュア用のシャフトをプロが使えるのかという疑問に、同社のプロサポートを統括する宮本憲一氏が答えてくれた。
「SV-3003Jは前モデルより全体的にトルクを抑え、先端は硬く、手元はややしなる特性で、より方向安定性を求めた設計になっています。剛性分布で見てもトップ選手が使っても不思議ではありません」
一方、尾崎直道や宮里聖志が使用しているブリヂストン・ツアーデザインTXD-70はXドライブシリーズにラインナップされている3種類のうちの1本。
市販モデルといっても元は昨シーズン同社契約プロに人気を博した三菱レイヨン製のプロトタイプB03-13(ディアマナスティンガー)なので性能は折り紙付き。
「弾き感があって、打感がダイレクトに伝わる。シャフトによってこんなに違うと実感させられた」と宮里優作が話すほど、プロのシビアな要求にも応えられるシャフトだ。
そうなると逆にアマチュアには難しいのではと感じるが、意外と使いこなすことができるそうだ。
「先が走るシャフトなので、安定して球をつかまえ、上げることができます。70グラムなので重量がやや重いと感じる人もいると思いますが、そこそこヘッドスピードのある方なら使いこなせます」(ブリヂストンスポーツ広報室長/嶋崎平人氏)
横峰さくらを筆頭に女子プロではさらに標準シャフトの使用比率が高い。しかもRやSRなどアマチュアと変わらないスペックがほとんどだ。
ミズノの場合、同社の4軸シャフトを使う選手も多いが、アベレージ向けドライバー・インテージX3のシャフトをJPXのヘッドと組み合わせて使う変わり種は岡本綾子と川崎充津子。
「XL02は、先端が軟らかく手元に来るほど硬く仕上げられ、しなりで飛ばせるため、ヘッドスピード40m/s前後のゴルファーには向いているシャフトです」(ミズノ広報宣伝部/西田維作氏)
「プロも以前のようにスウィングで飛ばすというよりは、道具で飛ばすというように変わってきている。どちらかといえば、プロが使うシャフトがアマチュアに歩み寄っている」(SRIスポーツ/宮本氏)のは確かだ。
「昔のプロはブラックシャフトといわれた無塗装のプロトタイプを使っていたが、総合メーカーとしてはやはり自社ブランドのシャフトを使ってもらいたいし、プロもそういう気持ちでいると思う」(ミズノ/西田氏)だけに開発にも力が入るのは当然だろう。
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