3軸、4軸の次は5軸? いま男子プロツアーで話題となっているのが、ダイワ精工のニューシャフトだ。
この数カ月、毎試合のようにダイワ精工の技術者が男子ツアー会場を訪れ、デビッド・イシイら数名の選手がシャフトのテストを行っているところが目撃されている。
ツアー関係者の間で「5軸シャフト」として話題になっているが、当のダイワ精工社内では5軸ではなく、このプロトタイプを「多軸シャフト」と称している。
「これまでの3軸や4軸シャフトとはまったく異なる製法・構造をしているから」(ダイワ精工ゴルフ事業部営業推進室/篠田賢一氏)というのがその理由だ。
3軸のスピーダーや4軸のアクシブはカーボン糸を3方向ないし4方向に織り込んで一枚のシートを形成しているが、ダイワの多軸シャフトは、4枚のシートを4方向に重ね合わせ、最後にカーボン糸でミシン掛けのように縫い合わされている。
「5軸目のカーボンは平面ではなく立体的に編み込まれており、従来製法よりも強度がアップしている。とくにつぶれに強く、どちらかといえばハードヒッターにメリットがある」(篠田氏)
実際、ツアープロ中心にテストを行っていることからも対象が競技者向けであることがうかがえるが、現在同社はブランド展開をアベレージ向けのオノフとシニア層中心のG3に絞り込んでいる。
「(ターゲットの異なる)オノフやG3への採用はありえない」と話す篠田氏に、かつての旗艦ブランドであるチームダイワの復活の可能性はと水を向けたところ、「クラブとしての展開は考えていない」という答えが返ってきた。
ねらいはズバリ、シャフトビジネスへの参入。リシャフト市場に加え、クラブメーカーへのOEM供給まで視野に入れた展開だ。同社のシャフトは自前でシャフトを製造しているクラブメーカーの中で元々高い評価を得ていた。
7、8年前まではプロサービスも行っており、カーボンを金属皮膜で覆ったメタカーボやアモルファスシャフトなど独創的なシャフトで、釣り好きのプロを中心に使われていた。だが、競争の激しい業界で7年以上のブランクは、まったくの新規参入に等しい。
グラファイトデザイン、フジクラ、三菱レイヨンの3強がそれぞれのポジションを確立している状況で、シェアを確保するのは並大抵ではない。果たしてビジネスとしての成算はどの程度あるのか。
「大手メーカーと数字で肩を並べられるとは思っていません。しかし、釣り具メーカーとしては世界一の自負があり、まず最高の品質の製品を作って技術力の高さを市場にアピールし、数年間かけてシャフトブランドとして育て上げていきたい」(篠田氏)
同社のドル箱である最高級ロッドを生産するラインをニューシャフト開発に回したのは、「どのメーカーもいいシャフトを作っており、対抗するためには、釣り竿のノウハウを生かし、もっとも精度の高い機械を使って、品質的に負けないモノを作る」(篠田氏)ためだ。
頻繁に繰り返されるテストの甲斐もあって、「とにかく曲がりが少ない」(デビッド・イシイ)と言われるまで完成度が高められている。
ただし市販化されるまでには、技術的にクリアしなければならない課題がまだ2つある。「フィッティング次第という部分もあるが、飛距離的にはまだまだ満足していないので、これから煮詰めて行く必要がある」(篠田氏)
もう一つは軽量化だ。カーボンシートを重ね合わせる構造上、どうしても大きくなりがちな重量をアマチュアが使いこなせる60グラム台まで落とさなければならない。
さらに、新規ビジネスとして成功させるために、「口コミ的な広がりがなければ難しい。じっくりとプロモーションを行い機が熟すのを待つ」考えで、一応来春を目標としている市販時期も流動的。
ツアーで話題性が高まった頃合いを見計らって発売する手法は、昨年、三菱レイヨンがディアマナを成功に導いたモデルだ。
ただ、プロモーションのターゲットを世界のトッププロに絞ったディアマナに対し、ダイワ精工ではプロだけでなくアマも対象としていく考えだ。
「最終的にはユーザーであるアマチュアに評価されなければ意味がない。試打会などではアマチュアにも打ってもらいたい」(篠田氏)。
デビッド・イシイをメインのテスターに選んだのも、ヘッドスピードがアマチュアに近いという理由からだ。
ロッディオ=ロッドの神様というブランド名を与えられ、社長の肝いりでスタートした新プロジェクトの成否が注目される。
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