今年の全米オープンの覇者、マイケル・キャンベルが、先のワールドマッチプレー選手権に優勝した。この勝利でキャンベルは、欧州ツアーの賞金ランキング2位のR・グーセンに約13万7000ポンドの差をつけてトップに踊り出、欧州ツアーの賞金王争いをヒートアップさせている。
全米オープンのパインハーストでは、優勝したキャンベルと、2部ツアー出身で無名のJ・ゴアが活躍したが、キャンベルが欧州のマッチプレーで優勝した同じ週に、奇しくも大西洋を挟んだアメリカの84ランバークラッシックでゴアがツアー初優勝を飾った。
ゴアは全米オープンの最終日に大叩きをしたものの、全米オープンで活躍した二人が、同じ週に優勝したことから、パインハーストの難しさが「フロックを生んだ」のではなく、この二人の実力が本物であることを証明した、と考えていいだろう。
それにしても、今年の世界マッチプレーは、様々な話題を集めた。なにより試合展開が面白く、最後の9ホールを残してキャンベルはP・マッギンリーに追いつかれ、オールスクェアに。
11番ホールで、女性のストリーカーがグリーンに駆け寄り、キャンベルがバーディパットをはずすというアクシデントも起きた。一進一退を繰り返し、15番、16番とマッギンリーがミスショットをして、キャンベルが2アップ。
「調子は悪くなかったが、マイケルがすばらしいプレーをし、彼を掴まえることができなかった」(マッギンリー)ということで、キャンベルが2&1で逃げ切った。
キャンベルは先の全米プロで活躍したS・エルキントンを準々決勝で破り、準決勝では大物のR・グーセンを下しての決勝進出だった。
84ランバーで初優勝を飾ったゴアが31歳、そして38歳のマッギンリーと36歳のキャンベルの決勝ということもあって、遅咲きの実力者達が、ようやく開花し始めたというのが欧米ゴルファーたちの評価だ。
ただし、今回の世界マッチプレー、試合前から別の問題で話題を集めていた。
というのは、優勝したキャンベルが「ゴルフの世界で、もっとも高額な賞金(優勝賞金は約2億円)であるにもかかわらず、出場資格のあるプレーヤー達の半分が出場を辞退したことに失望した。(それは)スポンサーの頬をひっぱたくようなもの」と発言。
ワールドランキングのトッププレーヤー達が、「ただスケジュールがあわないという理由だけで出場を辞退」したことを批判したからだ。
「この試合の歴史や過去のチャンピオン達(A・パーマー、G・プレーヤー、j・二クラス、S・バレステロス、N・ファルド、G・ノーマン等)を振り返ってみれば、私はこの試合が世界の5番目のメジャーだと本当に思っているんだ」と、試合前の水曜日にキャンベルは記者に話していた。
これが試合後の発言であれば、自分が優勝した試合の価値を高めるためだろう、という穿った見方をする向きもあったかもしれない。しかし試合前の発言をいうことで、再度、出場辞退したプレーヤーや米ツアーに対する批判の声が聞こえてくる。
辞退したプロの一人であるタイガーは、「マッチプレーは勝つのが難しい」とかつて語っていたが、4日間のトータルで争うストロークプレーと異なり、対戦相手の好不調にも影響を受けるマッチプレーは、実力のあるプレーヤーには、嫌われる傾向がある。
加えて、米ツアーはメンバープレーヤーの海外での出場試合数に制限を加えており、ビッグネーム達は億単位のアピアランスマネーが出ない限り、シーズン中は海外の試合に出場しなくなっているのだ。
そうした中で、世界マッチプレーの権威が、相対的に失墜しつつあるのも事実だが、その一方で、マッチプレーそのものを見直そうという声もある。歴史的に見ればゴルフの試合は、マッチプレーからスタートしたからだ。
いずれにしても今回の世界マッチプレー、キャンベルの実力と共に、マッチプレーの面白さが再評価される一方、ツアーのあり方に疑問を投げかけた試合だったといえるだろう。
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