プロが使うウェッジといえば、つい最近まではボーケイかクリーブランドが双璧だったが、ここに来て少し事情が変わってきたようだ。
日本ツアーで使用率が高いのはフォーティーン。フェース面をミルド加工した上にスコアラインが彫りこまれ、強烈なスピンがプロをも虜にした。
バウンスの強いオリジナルモデルに加えてローバウンスモデルを用意したのも成功の理由だ。いまでは「フォーティーンに負けないものを作りたい」と公言するメーカー関係者もいるほど、日本ツアーではウェッジのスタンダードになりつつある。
フォーティーン同様、ツアープロに密着した開発を行っているのはクルーズ。同社はツアーのサービスカーを運営しており、プロの要求を常にフィードバックしながら開発できる強みを生かして作られたのが、ソール面に凹みをつけたトリプルソールウェッジ。
機能とやさしさを両立させたとして評判になったこのウェッジがフルモデルチェンジされる。従来モデルとのもっとも大きな違いはフェース面に施されたミルド加工だ。
「フェース面をフラットにすることで、ボールとの接触面が増え、スピン性能が高まる」(クルーズ/宮原圭史氏)という。
フェアウェイウッドで不動の地位を築いたロイヤルコレクションが今度はウェッジでトップを狙っている。
この秋からツアープロに供給をはじめたDB(ダブルソール)ウェッジは、ネーミングの通りセンターとヒール側でバンス角を変化させて、フェースを開いて構えやすくしているのが特徴。
「ボールがフェースにのっている感じで、抜けもいい。調子が良かった頃のフィーリングを取り戻すことができた」とこのウェッジで復活を期しているのはアプローチの名手、東聡。ほかにも多くのトッププロが順番待ちしているが、
「一人の熟練職人がプロの要望に合わせて一本一本削っているため生産が追いつかない状態」(ロイヤルコレクション/岩崎暁展氏)だという。DBウェッジの市販予定は来年2月。
4軸シャフトのアーマックに次いで矢継ぎ早の攻勢に出るのは本間ゴルフ。馬場ゆかりらが使っているプロトタイプウェッジが新ブランドとして発売されるようだ。
BERESと刻印されたバックフェースはこれまでの本間とは異なる先鋭的なデザイン。ヘッド形状は、いわゆるボーケイタイプ、リンクスタイプ、オリジナルタイプの3種類が選べるという。
キャロウェイゴルフのデザイナー、ロジャー・クリーブランド氏が9月中旬に来日した。その手に携えられていたのは、プロトタイプのXツアーウェッジだ。
17年にわたりウェッジのスタンダードとなっているTA588を設計した張本人クリーブランド氏が目指したのは現代の技術で最高のウェッジだという。
Xツアーアイアンの流れを汲み、スコアラインの壁を立ち気味にしたことで強力なスピン性能が得られるほか、真ん中が窪んだ独特のソール形状で抜け良さが売りという。
「抜けが良いのに、打感がしっかり手に伝わります。またトウ側が出ているので開いたときにフェース面を広く使えて安心感があります」という山岸陽子のほか、芹澤信雄、久保谷健一、高橋勝成、飯島茜、小川愛らがシーズン中であるにもかかわらず早速ニューウェッジに切り替えたことから、かなり使いやすいウェッジであることがうかがえる。
近い将来、クリーブランド氏が直接聞いた日本人選手の意見をもとに改良が加えられたXツアーウェッジが市販される可能性が高い。
「ウェッジは手作りの部分が多いだけに大手メーカーは手を出しにくかった。また、使用契約を結んでいる選手も少ないので良いものを作れば新興メーカーも受け入れられるチャンスがある」(クラブ設計家/竹林隆光氏)
二極集中型から分散型へ。世界的な大メーカーから中小メーカーまで同じ土俵で戦うウェッジ競争が、いま熱い。
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