飛距離の次は、方向性の制限だ。ドライバーフェースのスプリング効果の制限に成功したUSGAが、今度はクラブヘッドの慣性モーメント、慣性能率(MOI)の制限に乗り出そうとしている。
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進化と規制のイタチゴッコが続く
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慣性モーメントにもいろいろあるが、この場合、ボールを打った時に、クラブヘッドがボールの衝撃に抵抗して一定の運動を続けようとする力のことと考えていい。
ちょっとまわりくどい表現だが、「ボールと理想的でないコンタクトによっても、良い結果を生む可能性を広げる、クラブヘッドの許容度を示す」(USGA)ものだ。
要はMOIが高ければ、スウィートスポットをはずしても、まっすぐに飛ぶ可能性が高いヘッドということになり、「これ以上MOIが高率化すると、ボールをまっすぐに飛ばす技術の低下をもたらし、ゴルフのチャレンジ精神を損なう」(USGA)という訳。
しかもこの慣性能率は、「過去15年の間に3倍にもなっている」ということで、いよいよ制限に乗り出すことになったようだ。
実は、この慣性モーメントの制限の動きは、今春から囁かれていたのだが、MOIはヘッドの大きさとも関連しており、既に施行されているヘッドサイズを制限すれば、慣性モーメントの制限にも繋がるのではないかと見られていた。
しかし、USGAが様々なクラブをテストした結果、ヘッドのサイズでは「効果的なMOIの制限が出来ない」として、慣性モーメントを独立し、制限することにした模様だ。
現時点では、まだ「提案」という形を取っているにすぎない。だから現時点で「ルール適合」とされているライバーについては、もしこのルールが適応されても「違法クラブ」になることはないようだ。
USGAは慣性モーメントの上限の数値を具体的に定めており、現在適合とされているクラブは、この上限内に収まるとしている。
ただし、この「提案」に対して、大きな反論や反発がなければ、来年の3月1日からこの上限がルールとなり、「曲がらないクラブ」が開発されても、公式競技などでは使えなくなる。
慣性モーメントの計算方法と測定方法は複雑なのでここでは省略するが、なにやらUSGAは、どんどん現実のゴルフから離れて行っているような気がしてならない。
確かにトッププロ達の実力がアップし、トーナメントコースのヤーデージは伸びる一方だし、グリーンは速く、難しくなっている。しかし、ゴルフを楽しむ一般ゴルファーにとって、そこまでの規制が必要なのかどうか。
今春、USGAがボールメーカーに対して「飛ばないボール」の開発を依頼したように、プロの世界だけに適用するゴルフルールを作ろうとしているようにも思えてくる。
第一、「適合クラブ」を作るためには開発に余分な予算がかかるため、中小のクラブメーカーには負担が多くなるばかりか、クラブの価格も値上げせざるえなくなるだろう。
プロへの制限が発端で、一般ゴルファーもその影響を受けるような規制ならば、もうこれ以上厳しくする必要があるのか、考えてみる時期に来ているだろう。
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