衣替えの10月、民営化された道路公団を始め、世界最大の新金融グループや市町村合併による新たな市、町が全国に誕生した。そして、ゴルフ場でも「ネーミングライツ」という業界初の手法で衣替えを果たしたコースが誕生した。
ネーミングライツ(命名権)は施設等の呼称の使用権。日本でも企業の広告・PR戦略として、野球場やサッカー場などメディアへの露出が比較的多いスポーツ施設を中心に、このところ盛んに導入されている。
先日16日にも、サッカー・J1の千葉が新ホームとなる千葉市蘇我球技場を「フクダ電子アリーナ」としてオープンさせたばかりだ。
この種の契約、これまでゴルフ場では見られなかった。だが、福岡サンレイクGCが地元の食品会社・ベストアメニティ株式会社との間でネーミングライツ契約を締結、この1日から「福岡サンレイクGCベストアメニティコース」との名称で営業を開始した。
ところで、その契約金額だが3年間で8000万円。名前貸しだけで、年間2600万円余というのはちょっと高いようにも思えるが……。
実は、両社の契約は単なる命名権だけではなかった。
契約相手のベスト社は、業界に先駆けて雑穀米の製造卸を始めた食品卸・メーカーで、現在は自然・健康食品の販売で全国展開を図っている。
同社は、認知度を高めると同時に、ゴルフ場という健康的で、かつ女性に人気の施設と提携することで様々なシナジー効果を期待している。
まず、クラブハウス内のレストランで、同社の有機無農薬野菜を中心にした無添加・無着色の食材を使用する。いわゆる自然食レストランで、ゴルフ場での本格的営業は国内初の試みだ。
「一般にも開放しております。始めて一週間で、平日は15名前後の来場があります。将来的には3桁(100名)に乗せたいと考えています」と強気の見通しを語るのは、同GCの社長兼支配人・津福武博氏。どうやら順調な手応えを得たようだ。
また、ハウス内のショップでも同社の自然・健康食品を販売している。
さらに「ゴルフを通して、食とスポーツと環境のあるべき姿を提示することで健康に貢献していきたい」(同社広報担当)として、コース管理の減農薬・無農薬の研究をすすめる。
また、「青少年の育成として、ジュニアゴルフクラブの立ち上げや、将来世界で活躍するプロゴルファーの誕生など、ゴルフ業界の発展に寄与していきたい」といった構想も発表している。
もちろん営業の面でも、ゴルフ場側がメンバーや顧客に月1~2回の割合で発送している営業案内に、ベスト社の広告チラシを同封する。反対に、ベスト社の通販メディアに同GCの案内を載せるといった戦略が、両社の間で企画されている。
これまでのゴルフ場にはない、積極的なマネジメントだが、その背景を津福社長は、 「今年の入場者数は4万6000人前後を見込んでいますが、今の商圏の規模から5万人が限界でしょう。 しかも、低料金競争からはなかなか抜け出せませんから、収入の限界も見えています。だったら、他に収入源はないかと考えて、今回のような契約を考えました」 と語る。
その結果、数社の相手先候補があったそうだが、ゴルフ場のイメージにもプラスになり、相手企業にも、クラブ会員(株主会員制)にも歓迎される契約先として同社を選んだという。
そして、この3日、同GCでは記念のイベントを開催した。すると地元メディアを中心に100人近い取材陣が来場。地元TV局がヘリで空撮もする大きな反響を呼んだ。
どうやら同GCのネーミングライツ契約は、業界の間で相当注目されているらしい。いずれ身近なコースが、突然、名前を変える日が来るのかも知れない。
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