SLEルールによりドライバーの飛距離に一旦歯止めがかけられた格好となった。クラブメーカーでは、ルール適合でも飛ぶドライバーの開発を急ぐ一方で、2006年モデルでは、なおさら飛距離が大事とばかりに、「飛び」をアピールしたアイアンを登場させる。
木から鉄、鉄からチタンへと2度の素材革命が起こったウッドに比べて、アイアンは劇的な変化がなかったといわれる。
「8本から10本セットの中で整合性をもたせる必要があるので思い切ったデザインは難しい」(キャロウェイゴルフPRマネージャー/松尾俊介氏)ことなどが大きな理由だ。
その中で近年各社が共通のテーマとしてきたのは飛び。さらなる飛距離アップを実現するために「複合アイアンが一つの答え」(ミズノ広報宣伝室/西田維作氏)という方向性が示唆されている。
ドライバーで採用したナノテク素材をアイアンに応用したナノテク素材をアイアンに応用したのがヨネックスのナノブイアイアンだ。
これはマレージングフェースの裏側にカーボン、ゴムメタル、エラストマーを複合した構造で、
「余分な振動を抑えて軟鉄のように気持ちのいい打球感だけを残しました。フェースを薄くすることで反発力が高まり、またカーボンの弾力とゴムメタルの復元力で、1番手以上飛距離がアップしている」(ヨネックス企画宣伝部/山本美雄部長)
また、トゥ、センター、ヒールに配置されるウェートの重量を番手ごとに入れ替えることでヘッドの返りやすさを最適化するなど、最近のドライバーで流行しているアイデアも採り入れられている。
ヤマハも11月中に発売予定のインプレス410Vと445Dにマレージングフェースを採用した。
狙いはずばり飛距離だが、上級者を意識して本体は軟鉄鍛造とし、ロフト、ライの調整も行えるようにしている。
また、410Vはαゲルは精密機器の緩衝材やスポーツシューズのクッション材として用いられている工業素材で、契約プロの藤田寛之も、
「マレージングは強い球が打てる。打球も良くなった」 と飛距離のアドバンテージの割に違和感の少ないことからすでに410Vを使用している。
異素材フェースでは、これまではフェースの軽量化によってスウィートエリアを広げる目的でチタンが多く使われていたが、ここに来て反発性能にすぐれているといわれるマレージングなどに注目が集まっているようだ。
ナイキは、超氷温処理という特殊な後処理を加えたステンレスフェースを用いたスリングショットOSS(オーバーサイズスリングバック)を12月に発売する。
「マイナス70度になるまで1分間に0.5度ずつ冷却し、0.8度ずつ温度を上げることで組織が均一になり強度が増します。そのおかげでフェースを薄くして余剰重量を周辺に配分することができました。 スリングバックといわれる後方のふくらみがさらに大きくなり、重心位置もより深く低くなった。その結果、7番アイアンで29度という超ストロングロフト化が可能となり、前作をしのぐ飛びとなっています」(ナイキ広報担当/落合智子氏)
また、バックフェースが目立たないスリングショットツアーも同時に発売される。
一方、従来の軟鉄鍛造製法のアイアンも進化している。
先週発表されたブリヂストンのツアーステージXブレードCBは、ツアーモデルながらロングとミドルアイアンのソール部分にタングステンのウェートを装着している。
外観からタングステンの存在がわからないデザインは、すっきりしたデザインを好む上級者に対する配慮だ。
尾崎直道と宮本勝昌が東海クラシックから使い始め、 「インパクトでキャビティ独特の弱さがない。かといってハードすぎず、楽に球が上がる」 と評価しており、アイアンを替えないことで有名だった横尾要までニューCBをバッグに入れ話題になっている。
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