12月中旬沖縄で開催される男子ツアー、アジア・ジャパン沖縄オープンゴルフトーナメントに宮里藍の出場が決まった。
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兄妹対決が実現?
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日本の女子としては初の男子ツアー挑戦。一見唐突に見えるが、実は昨年も主催者から藍サイドには水面下で「プレーヤーとして出場してくれないか?」という要請があったのだという。
しかし「いくらなんでも真剣勝負をしている男子プロの方々に失礼」と父・優氏が娘の出場を固辞。そこで大会側は最終日、ラウンドレポーターという形で藍に出演を促した経緯がある。
そして彼女がラウンドレポーターを務めた最終日、兄・聖志が8打差を逆転して記念すべきツアー初優勝を飾るという劇的な結末を迎えたのだった。
では、なぜ固辞した昨年から一転、参戦に転じたのだろうか? 優氏に聞いた。
「今年のはじめに(横峯)さくらちゃんがハワイで男子の大会に挑戦したり、ミッシェル・ウィがたびたび男子ツアーを賑わすなど、世界的な風潮として女子が男子のトーナメントに出ることにあまり違和感がなくなってきたという状況があります。またこれは地元・沖縄への恩返しという大きな意味もある。この流れの中なら自然ではないか、と考えたのです」
とはいえ12月初旬には藍にとって最大の難関、米女子ツアーのQスクール挑戦が控えており、5日間90ホールを極限の状態で戦い終えた直後、帰国そうそう男子ツアー参戦は本人にとって心身共に負担は大きい。そのリスクを承知で出場に踏み切った背景には、沖縄オープン特有の運営事情がある。
アジア・ジャパン沖縄オープンにはその名称でわかる通り、冠スポンサーがついていない。国内ツアーでは唯一、地方自治体、つまり沖縄県が共催者に名を連ねているトーナメントだ。
底を打ったとはいえ、依然景気が上向かない状況の中、地元企業が協賛金を持ち寄って大会運営を行う、いわば『もっとも地元に密着した手づくり大会』なのである。
ゆえに台所事情は苦しい。「もしかしたら今年で(開催が)最後になるのでは?」という噂がまことしやかに囁かれる中、大会運営の長である、沖縄県の稲嶺知事が立ち上がり、直々に「なんとかして藍ちゃんを大会に出してはもらえないだろうか?」と優氏に懇願。
そこにはゴルフ界を超越したヒロインが出場すれば、協賛スポンサーが募りやすいという意図が見え隠れする。
その説得に優氏もひと肌脱ぐ覚悟を決め、当初は戸惑いを見せていた藍も、沖縄の振興とゴルフの発展を目指す大会の主旨を汲み「私が少しでもお役に立てるなら」と出場を決意。
「出るからにはこれからのゴルフ人生のステップアップにつながれば」と前向きに決意を語っている。
一昨年、アマチュアでプロのトーナメントを制し、昨年は地元で行われた開幕戦ダイキンオーキッドでプロ4戦目にして優勝。今年もすでに4勝を挙げ、先の女子オープンでは区切りの通算10勝目をメジャーで飾るなど、これまで藍は我々の想像を遥かに超える離れ業をやってのけてきた。
全長6801ヤードのセッティングは通常の女子の試合より500ヤードほど長く、男子プロとの飛距離の差が50ヤード近い藍にとっては厳しい戦いになることは間違いない。
しかしまだ藍が高校生になりたての頃、ホームグラウンドであるベルビーチGCの同じティから2人の兄と一緒に回り、ハーフ2アンダーをマークして聖志と優作を負かしたことがある藍のこと。男子プロを凌ぐメンタルの強さを持ってすれば、面白いことになるかもしれない。
「パーオンできないホールは2つか3つあるでしょうが、沖縄での大会ですし、静筋をフルに活用すればひょっとして予選くらいは通るのでは? という思いもあります」と優氏も娘の強運に期待するひとり。
ディフェンディングチャンピオンの兄・聖志も「いいじゃないですか!」と妹の参戦を快く受け止めており心強い。
それにしても藍の人気に頼らざるを得ない男子ツアーには猛烈な奮起を促したいものである。
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