経営再建中の本間ゴルフが「名門復活」を期して矢継ぎ早の展開を見せている。
店舗拡大政策やゴルフ場開発への投資などがたたって、一時は借入金が400億円にまで膨らむ一方、ゴルフ用品市場縮小の影響をもろに被ったのが高級路線をとってきた同社だった。
今年6月には会社更生法による民事再生手続きがスタートし、スポンサー募集、店舗削減、ゴルフ場の売却など財務体質の強化に努める一方で、再建の柱として投入されるのが新ブランドの「ベレス」だ。
現在のゴルフ市場を支えるコア層は50~60歳代といわれているが、ホンマユーザーの平均年齢はさらに10歳ほど高い。5年、10年先を考えれば次世代のコアユーザーとなる若年層の開拓が急務だった。
「外資の参入でプレー料金が下がり、女子プロ人気も手伝って、若い人の間ではゴルフがスポーツとして認知されてきています。これに対して今からきちんとしたアプローチをしなければ将来はない」(本間ゴルフ宣伝担当係長/桑木野洋二氏)というのが新ブランドを立ち上げた一番の理由だという。
高級クラブの代名詞は、多くのユーザーにとって手を出しにくい存在でもあった。その反面、低価格商品はホンマファンから不評を買った。
ベレスのコンセプトは、普及価格帯でありながら高い品質感を維持し、これまで価格面で敬遠されていた新規ユーザーを獲得し、また離れていったファン層を取り戻すという役割を与えられている。
従来ブランドとは一線を画すため、宣伝広告もBERESの英字ロゴを前面に押し出し、よく見なければ本間ゴルフの製品とは気づかないほど。
11月2日にアスリートとアベレージ向けのウッド、アイアン計4タイプが発売されるが、アスリート向けドライバーはSLEルール適合、アベレージ向けは高反発とターゲットを明確にした商品展開が特色。
さらに来春にはレディス、シニア、ヘッドスピードの速いアベレージ向けが投入され、5つのラインですべてのユーザー層をカバーするという。また、フェアウェイウッドとアイアンにはカスタム475というスチール系の新フェース素材を採用するなど新しいアイデアも盛り込んでいる。
「カスタム475は昨今主流の455スチールを約18パーセント上回る高弾性。1.9ミリという薄さを実現し、抜群のやさしさを実現できました」(桑木野氏)
シャフトは4軸のアーマック。「アーマックがあったからこそベレスがあるといってもいいくらい」(桑木野氏)。同社の再建計画を支えているのがこのシャフトだ。
現在、同社で販売するクラブのうち8割がアーマック仕様となったことから、酒田工場の生産ラインをアーマック一本にシフト。コストダウンにより普及価格帯のベレスもアーマックで商品力を高めることが可能となった。
リシャフト市場においてもアーマックは好調で、直営店でのリシャフト客のうち他社ヘッドユーザーが半数以上を占める。
「敷居が高い印象を持たれていたお客様に来店していただくきっかけとなっています」(桑木野氏)
社員の士気も高まっている。
「価格を下げなければモノは売れないと自信喪失気味だった社員も、ブランドに自信を取り戻しています」
ベレスの月間販売計画はウッド3000本、アイアン300セット。当初は国内のみだが、来年1月の米国PGAショーではベレスをメインにした出展を計画、ホンマのブランド力が強い東南アジア諸国でもベレスを展開していく考えだ。
同時に発売されるウェアも、ファッション性、機能性ともにアパレルやスポーツアパレルメーカーに遜色ないモノ作りを目指すという。
「ホンマが培ってきた上質感は守り続ける」(桑木野氏)。モノ作りの原点に立ち返った老舗ブランドの再出発を見守りたい。
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